健康一言アドバイス

便秘〜前編〜

大切な生活習慣のひとつである「排便」。食生活や生活習慣の変化によっても引き起こされます。厚生労働省の調査によれば、女性は20代から、男性は60代から悩む人が徐々に増え、男女とも年齢が高いほど多くなることが報告されています。便秘は、冬になりやすかったり、悪化しやすくなると言われています。そんな便秘を今号と次号にわたってこのコーナーで取り上げます。今月は、まず便秘になる仕組みから!

便は何からできている?

人間の便は、約80%が水分で、残りの約20%が消化・吸収されなかった食べもののかす、腸内細菌(善玉菌、悪玉菌)、胃や腸の壁からはがれた細胞の死がい、消化液などが集まってできています。
便は汗や尿とおなじ老廃物ですから、ためこむのはよくありません。便が体にたまると、集中力の低下や食欲不振、おなかが張るなど、さまざまな症状が出てきます。便が発する有害物質が血管から血液中に流れ込み、体内をめぐって、肌荒れにつながることもあります。

便はどうやって作られ、出る?

私たちが食べた物は、口の中でかみ砕かれて食塊になり、食道を通って胃に送られます。食塊は胃の中でぜん動運動によって胃液とよくかきまぜられ、消化しやすいドロドロ状になります。胃の内容物が十二指腸へ送られると、膵液、胆汁などと混ぜ合わされさらに消化が進み、小腸へ送られます。この胆汁の色素が、便の色の正体です。栄養素の大部分は小腸を通過中に消化・吸収され、大腸に到達する頃には、9割ほどが水分になっています。その後、大腸がぜん動運動を行いながら、徐々に水分を吸収して固形化し、便を形成します。
直腸に便が到達すると、直腸の壁が収縮し、その刺激が排便中枢を介して大脳に伝わり、便意が生じます。便意が起こると、腹筋の収縮、横隔膜の下降により腹圧を高めて(いきんで)、便を押し下げます。そして、肛門括約筋をゆるませて、体外に排出します。口から入った食べ物が、便として排泄されるまでに24〜72時間かかります。また、空っぽの胃に食べ物が入ると、胃が大腸に信号を送り、その信号を受け取った大腸が運動をはじめ、たまっている便を直腸へ送ることがあります。これは「胃・大腸反応」と言われるもので、一日のうち朝食後がもっとも便意を感じやすいのはこのせいだといわれています。

理想的な排便は?

便がたまらないように、定期的に排便があることが理想的で、回数は1日1回あることが望ましいです。
また、便をチェックすることによって、自分のからだの状態を知ることができます。理想的な便は、あまりにおいがなく、果物のバナナくらいの硬さで、色は黄色っぽい茶色のもの。繊維質を多く含むものは水に浮きます。毎日200グラムから300グラムくらい出ると良いとされています。

消化器病センター 医師 堀木 紀行

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