外反母趾(がいはんぼし)
足の親ゆび(母趾)の付け根が変形していて、「自分は外反母趾だ」という自覚がある方も多いのではないでしょうか。外反母趾は、身近で、特に痛みもなく、心配することのないものと思われているかもしれませんが、重症化すると歩行困難を招く可能性があります。
外反母趾の症状や治療の他、ぜひ取り入れてほしい悪化を防ぐ運動法について解説します。
外反母趾とは
足の親ゆび(母趾)が外側を向いて変形している状態を「外反母趾」と言います。
変形のみで痛みがない場合もありますが、外反母趾の影響で、母趾の付け根の部分が靴で擦れたり、腫れたり(図表1)、足の裏にタコ(胼胝:べんち)ができたり(図表2)することによって、痛みが伴うこともあります。
外反母趾の原因は、はっきりとしていませんが、疫学の研究では、女性が男性に比べてなりやすく、ハイヒールなどの靴が発生に影響するとされています。
重症化すると歩行の問題にも
外反母趾は、重症化しても必ず痛みがあるわけではありません。しかしながら、変形に伴ってタコがいろいろなところにできたり、母趾の付け根の部分(バニオン)が靴で擦れて炎症を起こすようになると相応の痛みを感じます。
重症の外反母趾では、第2趾(人差し指)が母趾に重なって、屈曲変形や脱臼を来すこともあります(図表1)。
このように外反母趾の変形が高度となり、疼痛を伴うようになると、歩行時のしっかりとした踏み返しができなくなるため、歩行速度やバランス能力の低下を招き、結果として転倒しやすくなります。
外反母趾の3大治療
外反母趾の主な治療には、1)インソールなどの装具療法、2)足の中の筋肉を鍛える運動療法、3)根本的に骨を切って形を整える手術療法があります。
装具療法では、靴の中に入れる中敷き(インソール)や矯正装具を用いて、足にかかる荷重の偏りを調整したり、タコ(胼胝)に負担がかかり過ぎないようにしたりします。しかし、これらは痛みを軽減するための対処であり、残念ながら外反母趾の根本的な変形矯正としての効果はほとんどありません。
運動療法では、足の中の筋肉を鍛える目的で、足趾を開いたり閉じたりする運動(図表3)や、ゴム紐を母趾で引っ張り合うHohmann運動(図表4)などを取り入れます。
これらの運動療法は、初期の外反母趾変形の改善効果や変形進行予防効果があると言われていますので、少しでも変形が気になるという方は、早速取り入れていただきたいです。
変形が強く、疼痛がひどい外反母趾で、装具療法や運動療法などの保存的治療がうまくいかない場合には、手術療法が考慮されます。
手術では、外反母趾の矯正のために、骨を切って角度を変えたり、腱を切ったりする処置を行います。外反母趾に伴って他の足ゆび(足趾)にも負担がかかり、問題が出ている場合には、他の足趾の処置も検討します。
整形外科
講師 西村明展
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外反母趾は、65歳以上の女性の4割近くが持っている足の変形です。変形があっても痛みがなければ、経過を診ていただければよいですが、痛みを伴う場合には専門の整形外科の受診を考えてください。特に、母趾が隣のゆび(足趾)と重なり始めたら、変形や痛みが悪化する危険信号です。また、靴との相性や履き方によって痛みの出方も変わりますので、受診の際は、普段履いている靴を持っていくことをお勧めします。
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