がんゲノム医療拠点病院に再指定
- 2023-5-1
- がん診療 CANCER MEWS
- #がんゲノム医療, #ゲノム診療科, #遺伝子パネル検査
─ 地域の病院とともに進める最新のゲノムがん医療体制 ─
多くのがんは、その部位の細胞の遺伝子が変異することにより発症することがわかっています。そこで、変異した遺伝子を特定する「遺伝子パネル検査」を行い、その情報を基に治療薬を選定しようとするのが「がんゲノム医療」。国内では、厚生労働省から指定を受けた医療機関でのみ受診が可能です。
三重大学病院は、2019年に「がんゲノム医療拠点病院」に指定され、この春、再度指定を受けました。当院のゲノム診療科の奥川喜永科長にその取り組みなどについて聞きました。
ゲノム診療科 科長・教授
奥川 喜永
国が「がんゲノム医療拠点病院」を指定する目的は何でしょうか。
新しいがん治療の一つとして期待されているがんゲノム医療を、全国のどこに住んでいる方でも受けることができる体制を構築することです。
その目的において、厚生労働省が「がんゲノム医療中核拠点病院」を13か所、「がんゲノム医療拠点病院」を32か所指定しています。また、「がんゲノム医療連携病院」として、198か所を公表しています(令和5年3月1日現在)。このうち、当院が指定を受けているのが「がんゲノム医療拠点病院」です。
「がんゲノム医療拠点病院」の指定要件はどういったものですか。
がんゲノム医療を自らの施設で完結できる人材と知識やノウハウがあることが求められます。
例えば、がんゲノム医療では、がんの原因となっている遺伝子の解析結果を正しく判断し、どのような治療薬が適合するのか検討する機能が非常に重要です。その検討の会議は、医師のみならず、多職種のがんの専門家が集まって行われ、「エキスパートパネル」と呼ばれます。日本語で言うと、“専門家による会議”でしょうか。
がんゲノム医療拠点病院は、そのエキスパートパネルを開催できる体制や人材をはじめ、施設や安全対策などの機能、治療実績などが一定の基準を満たしている必要があります。
また、がんゲノム医療中核拠点病院やがんゲノム医療連携病院と連携してがんゲノム医療を中心的に行うという役割も担っています。
その「がんゲノム医療拠点病院」に、三重大学病院はこの春改めて指定されました。
がんゲノム医療拠点病院は、4年おきに審査が行われ、今年度は、全国65 施設が申請し、32 施設が厚生労働省より指定されました。その中で、当院は前回の2019年度に続き、再指定を受けたことになります。
特に大きく評価された点は、当院がこれまで行ってきた三重県におけるがんゲノム医療の普及活動とその実績です。三重県内の医療機関と密に連携し、がんゲノム医療の窓口となるがん遺伝子パネル検査をスムーズに提供できる体制を構築したことが大きかったと思います。
がんゲノム医療携拠点病院として、今後さらに取り組んでいきたいことはありますか。
地域において、がん遺伝子パネル検査をさらに普及させていくことが当院の大きな役目であると考えております。
その一つとして、コロナ禍でできなかった市民公開講座などを各地域のがん診療拠点病院・準拠点病院・連携病院とともに積極的に実施し、地域の皆さんへのがんゲノム医療に関わる情報提供を再開する予定です。また、地域の医療機関とのつながりを一層強めながら、がんと闘う患者さんを共にサポートし、最新のがん治療を三重県にいながらにして受けていただける体制づくりをより進めていきたいと考えております。
がんゲノム医療は、まだまだ新しい領域です。どんどん進化しているのでしょうか。
がんゲノム医療は日進月歩で前に進んでおり、がん遺伝子パネル検査を受けることで初めて投与可能となる保険適用薬剤が徐々に増えています。
また、検査に関しても、血液やこれまでとは違う組織を用いるがん遺伝子パネル検査が薬事承認され、今後、保険適用になる予定です。さらに、これまでがん遺伝子パネル検査は固形がんのみが保険適用の対象でしたが、令和6年度には、血液がんも対象になると期待されています。
がんの治療に向き合っている方々やご家族の方へのメッセージをお願いします。
当院では、三重県下でがんと闘い治療を受けている患者さんとそのご家族に、最新のがん治療を提供できる体制を整えるため、新たに「三重大学医学部附属病院 総合がん治療センター」を開設しました。先端がん治療部門では、県内では当院でのみ提供可能な最新のがん治療を提供しています。ひとりで悩まず、いつでも気軽に当院までご相談ください。
がんゲノム医療については、当院広報誌 MEWS Vol.30「がんゲノム医療」(PDFが開きます)でもご紹介しています。
合わせてご参照ください。