医療と防災イメージ

三重大学病院と「災害拠点病院」

第1回目の今回は、当院の災害対策の中心的組織である災害対策推進・教育センターの岸和田昌之センター長が「災害拠点病院」について解説します。

「災害拠点病院」とは、災害時に救急医療を担う病院

災害拠点病院の定義は、「災害時における初期救急医療体制の充実強化を図るための医療機関」。24時間緊急対応し、被災地からの傷病者の受入れ・搬出を行えること、災害対応の専門チームが構成できること、被災しても医療継続ができるよう計画が整備されていることなど、運営体制、施設、設備、搬送機能において多くの要件を満たしている医療機関が各都道府県により指定されています。

三重県の広域な災害医療に対応

具体的な役割には、当院が位置する中勢地域に加え、伊賀地域が被災した際に、国・県・市町村、圏内の救命救急センター、災害拠点病院、消防・警察・自衛隊などと協働した災害対応といったものがあります。

北勢・南勢・東紀州および近隣県で大規模災害が発生した場合にも、国や自治体が主導する医療支援体制に参加して、医療スタッフ、DMAT(災害派遣医療チーム)、DPAT(災害派遣精神医療チーム)の派遣、支援物資の搬送などを担うと共に、被災患者さんの受入体制を整備するという重要な役割もあります。

備えなくして、本番はあり得ない

災害拠点病院は、災害による負傷者に加え、入院や外来の患者さんの命を守れるよう、災害に強い必要があります。災害時にも医療を継続するための計画書や災害対策マニュアルに沿って、様々な災害を想定した対策を導入し、備えています。多職種の職員が参加する訓練も年間20回以上を数えます。

災害対応は、備えなくして、本番はあり得ません。「これだけしたら十分」ではなく、「まだまだすべきことがある」という視点で備えとしての取り組みを続けています。

災害対応の訓練
ドクターヘリ

南海トラフ地震を想定した津波対策

「平成25年度三重県地震被害想定調査結果」(平成26年3月発表)では、過去最大クラスの南海トラフ地震が発生した場合、当院付近には約65分後に3.5m高の津波が到達すると想定されています。

当院に近接する海岸線では、最大6mの高潮に耐えられるとする防潮堤が完成していますが、当院では最低でも1階にダメージを受ける可能性は想定しておかなければなりません。さらに大きな被害も想定し、いかなるときも適切な対応を迅速に落ち着いて取れるように準備を進めています。

地域の皆さんのご理解があってこその災害拠点病院の役割

災害時、三重大学病院は、多数の入院患者さんの命をお守りすると同時に、災害拠点病院として重症患者さんの受け入れを優先することが求められます。つまり、当院は一時的であっても、緊急避難場所や軽症者救護所になることがどうしてもできません。

一度に多数の傷病者が発生するような非常事態には、患者さんの状態に基づいて治療の優先度を決めるトリアージという作業もせざるを得ません。よって軽症者の方にはご自分で他の救護施設に行っていただくようお願いすることもあると思います。

また、平時の訓練でも防災ヘリの運行確認などでご協力をお願いすることもあります。

このように当院の災害拠点病院の役割は、地域の皆さんのご理解によって支えられている側面もとても大きいのです。

医療と防災の知識を地域の皆さんにもお伝えしていきたい

今年3月に、『これだけは知っておきたい!南海トラフ大地震の津波への備え』と題して、本学の医学部が市民公開講座を開催し、附属病院も『もしもに備える学びの場~救命と救護の体験会』を同時開催しました。

いずれの会場も200人以上の方にご来場いただき、津波後の感染症対策、災害時に役立つ応急処置や一次救命の仕方などについて座学や体験を通じてお伝えしたり、災害医療で欠かせない防災ヘリやドクターヘリなども間近で見学していただきました。

また、2月末にも三重テレビの番組内の「Front-Line 三重大学病院」というコーナーで、医療と防災をテーマにお話をしました。

今後も、災害拠点病院として当院が蓄積してきた防災や災害医療に関する知識やノウハウを地域の皆さんと共有したり、防災に対する備えの大切さや自助・共助のあり方について、一緒に学び、考える機会を作っていければと思っています。

その一つとして、このOnline MEWSでもいろいろな情報を発信していきたいと考えています。

三重テレビ「Front-Line三重大学病院」の内容は、Youtubeの当院公式チャンネルでご覧いただけます。

岸和田昌之

肝胆膵・移植外科 副科長
災害対策推進・教育センター長
病院教授
病院長特命補佐(災害対策推進担当)
岸和田 昌之

防災訓練の指揮を執るときには、ヘルメットに防災ジャンパーがトレードマークだが、実は、日本肝胆膵外科学会が認める「肝胆膵外科高度技能専門医」の資格を持ち、肝胆膵領域の高難度手術に多く携わる外科医。また、膵がん撲滅のための啓発アクション「パープルリボン in 津」の実行委員長でもある(この時はパープルのTシャツ)。防災ジャンパー、白衣、手術着、パープルのTシャツを自在に着こなす当院の防災対策におけるキーパーソンの一人。

三重大学病院は、万が一の災害時に地域の救急医療を担う「災害拠点病院」に指定されています。
災害発生時に、災害による負傷者への対応だけでなく、入院患者さんの医療を継続するという複数かつ重要な役割を適切に実行できるよう、当院では平時から様々な取り組みと準備を行っています。
Online MEWS「医療と防災」では、当院の防災対策やみなさんに役立てていただける防災のヒントをお伝えしています。

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