医療と防災イメージ

多数傷病者受入訓練における多職種との連携

今回の「医療と防災」では、前回に引き続き、9月28日(土)に行った、震度6強の地震により多数の傷病者が搬入された場合を想定した大規模災害対応訓練を取り上げます。

大規模災害時は、外部との連携なくして災害対応や医療を継続することはできず、さまざまな部署との連携が必要となってきます。よって、関係部署との連携を円滑かつ適切に取れるよう、具体的な連携方法について日頃から相談をしておくことや、できるだけ実際に近い状況下で訓練をしておくことがとても重要となります。
同訓練にも、当院の医療従事者・病院職員だけでなく、消防署や警察、近隣自治会の方々など多くの方に参加いただきました。今回は、そうした「多職種との連携」にテーマを絞ってご報告したいと思います。

DMATや医療支援チームによる外部支援

今回の訓練には、県内4病院のDMAT※や医療支援チームに参加していただき、訓練では、災害時に外部から派遣された応援DMATという想定で当院のエリア診療活動に加わっていただきました。
訓練終了後、参加された4病院の方から感想をお聞きしました。

※災害派遣医療チーム「Disaster Medical Assistance Team」の頭文字をとって「DMAT(ディーマット)」と呼ばれます。医師、看護師、業務調整員(医師・看護師以外の医療職及び事務職員)で構成され、大規模災害や多数傷病者が発生した事故などの現場に、急性期(おおむね48時間以内)から活動できる機動性を持った、専門的な訓練を受けた医療チームです。(参考:厚生労働省 DMAT事務局)

参加された外部DMATメンバーのコメント

市立伊勢総合病院
医師 藤崎 宏之先生

「外部からの応援DMATとして、チームではなく単身で参加しました。まず規模が大きく参加人数も多い中で、災害状況などの想定が細かく設定されており、臨場感を持って訓練に臨めました。担当した緑エリアでは、前半、傷病者が少なく、医療資源に余裕がある中での診療体制作りに少し迷いは出ましたが、中間ミーティングの後の後半ではニーズに応じて診療体制が見事に調整され、明らかな停滞が発生する事なく訓練が進んだと感じました。外国人対応のためのコミュニケーションアプリ『MELON』も初めて体験しました。」

伊勢赤十字病院
医師 大森 教成先生

「医師2名、看護師2名、薬剤師1名、検査技師1名といった合計6名のDMATチームとして参加しました。赤エリアへの応援という指示を受けて、診療に参加し、災害や外傷に慣れない院内スタッフのサポートをしました。三重大学医学部附属病院のスタッフが大勢参加されていましたが、日常診療と違う災害時の医療について真剣に取り組んでいて、我々が参加することで災害時対応のトレーニングに少しは役に立てたのではないかなと思っています。我々としても自施設の訓練ではなく、他施設に派遣されるという貴重な体験ができました。当院での訓練にも生かしていこうと思います。」

遠山病院
医師 小西 克尚先生

「今回の訓練は、現実的な災害シナリオに基づいて実施され、初動対応時の混乱を体験しながらも、改善を重ねることで実践的な学びを得る貴重な機会となりました。また、多職種の参加や他病院との連携を実際に体験することで、災害対応における協力体制の重要性を改めて実感いたしました。これらの経験を踏まえ、今後も訓練の機会を最大限に活かし、連携や相互協力を一層強化してまいりたいと考えております。」

参加された医療支援チームのコメント

永井病院
臨床工学技士
加藤 佳史さん

「外部支援チームとして、今回の訓練に参加しました。当院は非災害拠点病院ということもあり、外部支援チームとして参加するのは初めての経験でした。訓練当初は状況の把握ができず戸惑う場面もありましたが、ミーティングを通じて現場の方々との密なコミュニケーションを取っていくことで、実際に現場スタッフとのより良い連携を取ることができたのではないかと思います。」

外部医療支援チームの集合写真 
災害対策本部へチーム4隊の到着を報告する様子

津市北消防署との連携

昨年に引き続き、津市北消防署の方にもご協力いただきました。
今回の訓練では、大規模災害による傷病者の救助と搬送を想定し、救急車による傷病者の搬送をしていただきました。当院への搬送後、現場での状況や傷病者情報などを的確に医療スタッフに伝えるコミュニケーションなど、当院スタッフにとっても外部連携の有意義な訓練機会となっていました。

発災による混乱の中でも、搬送された傷病者をできるだけ早くかつ安全に搬送していただき、スムーズに受け入れることができるよう連携を取りながら引き続き訓練を行っています。

救急車から傷病者を搬送している様子

三重県警警察との連携

今年度からの新たな取り組みとして、被災地活動経験のある法医解剖医、警察本部検視官の方に黒エリアに加わり、サポートしていただきました。訓練当日だけでなく、訓練に向けた事前検討の段階から、各種用紙を使用した情報収集や最適な動線についてのご助言いただきました。

過去の訓練において、黒エリアでは主にエリア開設と負傷者の死亡確認のみでしたが、今回は、遺体の情報収集、検案・検視対応、遺族面会を想定した実際の活動内容に近い訓練を行うことができました。また、その中で動線上の遺体や遺品の配置場所、遺族面会時の配慮の必要性などさまざまな課題も見つかりました。

今回の連携がきっかけで、三重県災害訓練にも当院で使用した黒エリアの資料を活用していただくこととなり、多職種と連携した、より現実に近い訓練の重要性を改めて感じました。

警察による遺体の検視の様子

災害対策・教育センター 担当:[な]

三重大学病院は、万が一の災害時に地域の救急医療を担う「災害拠点病院」に指定されています。
災害発生時に、災害による負傷者への対応だけでなく、入院患者さんの医療を継続するという複数かつ重要な役割を適切に実行できるよう、当院では平時から様々な取り組みと準備を行っています。
Online MEWS「医療と防災」では、当院の防災対策やみなさんに役立てていただける防災のヒントをお伝えしています。

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