それ行け!三重大病院(診療科・部門紹介)

検査部 細菌検査室

病院では、「検査」という言葉をよく耳にします。同時に、「また検査かぁ」とささやかれている方も多いかもしれません。
検査は、不調の原因を調べたり、あるいは回復を確認したり、最適な薬や治療法を判断したり、医療においてとても重要な役割を果たしています。
今回のこのコーナーでは、様々な検体の検査を行う当院検査部のうち、「細菌検査室」をご紹介します。厳格に管理され、病院スタッフも簡単には出入りできない細菌検査室では何が行われているのでしょう?
それ行け!三重大学病院!それ行け!細菌検査室。病気の原因となっている微生物を明らかにするために。

細菌検査室の役割

病気の原因となる微生物を見つけ、抗菌薬を調べる

三重大学病院の検査部には、検査の対象や手法の違いで分けられた6つの検査室があり、約370項目の検査に対応できるようになっています。
その中で「細菌検査室」は、主に患者さんから提出された喀痰、便、膿、尿といった検体を培養し、病気の原因となる微生物(細菌)を見つける仕事をしています。
また、検出した微生物に対して効果のある抗菌薬を調べるということも行っています。

疾患の特定や治療方針の決定を支える

検出された細菌が何であるかを確定できれば、どのような疾患を引き起こす可能性があるのか予測することができます。それが患者さんの症状と一致していれば、疾患の特定にもつながっていきます。
そして、その細菌の感受性(抗菌薬が効果があるかどうか)を調べることで、複数ある抗菌薬のうちどれを使用するのが一番効果的かがわかり、治療の方針を立てることができます。

検査部 細菌検査室
主任/検査技師 永田恵一

社会問題にも関わっている細菌検査

近年、抗菌薬が効きにくい微生物(耐性菌)が増加しており、世界的な社会問題となっています。抗菌薬を乱用すれば、逆に耐性菌の発生を促がすということが過去の歴史から明らかです。
これを防ぐには、抗菌薬の最小限かつ適切な使用を行っていく必要があり、その意味で感受性の検査は必須です。
院内に対しても、抗菌薬の選択や感染対策に必要となる耐性菌の情報を把握できるよう、感染制御部の臨床検査技師が関連情報をまとめ、提供しています。

厳格な国際規格に基づく細菌検査

厳格な国際規格に基づく検査品質と精度

三重大学病院の検査部は、臨床検査室の品質と技術能力に関する国際規格ISO15189の認定を受けています。こうした厳しい基準に沿って検査を運営することで、精度の高い検査結果を提供することが可能です。
技術面だけでなく、設備においても高性能な機器を取り入れており、例えば、微生物の同定には、質量分析器という最新のものを採用しています。従来の機器では1日を要していた同定検査も、質量分析器では数十分で完了することができ、患者さんの治療方針を早期に決定できるようになっています。
これからも高精度な細菌検査を通して患者さんの診療に役立てるように、検査技術をさらに高めていきたいと考えています。

質量分析器をはじめ、細菌検査室には様々な最新検査機器が導入されている。

検査の手順

では、実際に患者さんからご提供いただいた検体がどのように細菌検査されているのか、簡単にご紹介しましょう。
大きくは、1) 染色と培養、2) コロニーの純粋培養と微生物の同定、3)感受性の検査、4)感受性検査の判定と抗菌薬の効果の判断、という4つの工程に分かれます。

  1. 検体の提出当日(染色と培養)
    • スライドガラスに検体を塗布し、どのような微生物が存在するか大まかに把握するために、グラム染色という方法で微生物を染色。
    • グラム染色で得られた結果をもとに、微生物を培養するための培地を選択。
    • 選択した培地に検体を塗布し、35℃の孵卵器で一晩培養。
  2. 1日後(コロニーの純粋培養と微生物の同定)
    • 培地上に形成されたコロニーから、病気の起炎菌と考えられるコロニーを選別し一晩培養(純粋培養)。
    • コロニーを基に微生物を同定。
  3. 2日後(感受性の検査)
    • 感受性検査のプレートに純粋培養した微生物を接種し、一晩培養。
    • 耐性菌が疑われる場合は、耐性のメカニズムを検索するための方法で一晩培養。
  4. 3日後(感受性検査の判定と抗菌薬の効果の判断)
    • 感受性検査の判定を行い、抗菌薬の効果があるかどうかを判断。
    • 耐性菌であった場合は、耐性のメカニズムを判定。

的確な検査に欠かせない患者さんのご協力

細菌検査に際し、患者さんに協力いただきたいポイント

細菌検査では、検体の良し悪しによって検査の結果が変わります。検体の質が悪ければ、病気の起炎菌が検出されないこともあります。特に、喀痰に関してはそれが顕著に表れます。
その意味では、正しい検査結果を得るために、患者さんのご協力が欠かせません。
ここで、良質な喀痰の採取の方法について、合わせてご紹介したいと思いますので、ぜひご協力をお願いします。もし検査の際に不明な点があれば、病院スタッフに遠慮なくお尋ねください。

【痰(たん)を採る時間】

起床時に採るのが最適とされています。

【採る方法】

まず、口内を水道水でブクブクとゆすぎます。その後、深呼吸を5~6回行い、咳とともに痰を出し、専用容器(病院でお渡しします)に入れます。
痰は肺の奥からでてくるものが検査に適しており、黄色や淡緑色の痰が採れれば、最も良い検査ができます。逆に、鼻汁やつば(唾液)は検査に適しません。

正確かつスピーディーな細菌検査を支える細菌検査室チーム
(手前左から、永田恵一 主任、田辺正樹 感染制御部長、後列左から、小寺恵美子 臨床検査技師、河島史華 技術補佐員、戸松絵梨 臨床検査技師、中澤恵子 臨床検査技師)

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