三重大学バイオバンクセンター
- 2024-3-12
- 診療科・部門紹介
- #バイオバンクセンター, #生体試料
医学研究を進め、新しい診断法や治療法を確立することは、大学病院が持つ使命の一つです。そんな使命の下に、当院には「バイオバンクセンター」が設置されています。ここは、同意を得た患者さんからご提供いただいた血液や組織などを適切に収集・保管し、未来の患者さんにより効果的な診療を届けるための医学研究に活かすという役割を持っています。今回は、バイオバンクセンターのご紹介です。
それ行け!三重大学病院!それ行け!三重大学バイオバンクセンター。未来の医療発展を目指して。
三重大学バイオバンクセンターとは
「三重大学バイオバンクセンター」は、生体試料といって、同意いただいた患者さんの血液や尿などの体液、検査・手術により摘出された組織、またそれに関連する情報や病歴などの医療情報を合わせて収集し、保管しているセンターです。
また、これらの生体試料や情報を、三重大学の倫理審査委員会の承認および機関の長の許可を受けた医学研究課題を行う研究者に対し、適切な形で提供する役割を担っています。
患者さんのご協力を医療発展につなげる
三重大学病院がこうしたバイオバンクセンターを設置している目的は、将来の医療の発展に役立つ医学研究をより効果的に行うためです。
患者さんからご提供いただいた生体試料や情報を様々な角度から研究することは、例えば、どのようにして病気が起こるのか、どのように進行するのかなどを明らかにすることにつながり、結果的に新たな診断法や治療法の開発を促します。
また、薬剤の効力や安全性を評価し、標的となる疾患の特性を理解する際にも役立ちます。
専門性の高いスタッフによる運営
バイオバンクセンターが扱う情報は、患者さんからご提供いただいた非常に貴重なものであると同時に、厳しい情報管理や保管技術が求められるものばかりです。
よって、バイオバンクセンターは、医師のみならず、生体資料を取り扱う技術と知識を有する研究者や検査技師、倫理委員会や他のバイオバンク施設との連携や広報活動を担当する看護師など、多職種のスタッフの専門性を必要とします。
これに加え、患者さんにバイオバンクについて説明する医師や看護師、採血などを行う臨床検査技師、検査・手術などから得られる組織を取り扱う病理医、バイオバンクの生体試料や診療情報を用いて医学研究を行う研究者など幅広いバックグラウンドを持つスタッフが関わって運営されています。
現在、三重大学バイオバンクセンターは、渡邉センター長(腫瘍病理学教授・病理部部長)、今井副センター長(病理部副部長)、三室個人情報管理者(病理部助教)が兼任として、また、私、江口と、臼杵助教、松田助教、中野臨床検査技師、石垣臨床検査技師、宇野事務補佐員が専任として所属し、専門性の高い運営を行っています。
患者さんの賛同と同意に基づく活動
生体試料や医療情報の収集対象となるのは、当院の外来か入院で診療を受け、バイオバンクの趣旨に賛同し、同意書にサインをしていただいた患者さんのみです。患者さんの同意なく収集したり、保管したりすることはありません。
また、採血や手術など検査や治療で得られた生体試料を対象としているため、バイオバンクのためだけにご提供をお願いすることもありません。
患者さんの個人情報についても、保管の際にはすべて特定できない形にされます。バイオバンクセンターが収集した生体試料や情報を活用した研究の結果が学会や医学雑誌などで発表される場合にも、患者さんのお名前や身元などが公になることは一切ありません。
三重県全域へのバイオバンク展開
三重大学バイオバンクセンターは、将来的には、三重県内の関連病院のご協力を得て、生体試料や情報の収集を院外に広げ、当院を軸とした三重県バイオバンク事業の展開を目指しています。それにより、医療の発展につながる院内外の医学研究への貢献が期待されています。
様々な関係者との協業
私自身、基礎研究者でありながら、消化器内科に在籍し、身近に診療を感じるという日本では珍しいポジションで基礎研究や臨床研究に取り組んできました。その中で、臨床研究ですぐれた成果を導き出すには、適切に管理された生体試料や診療情報が必須であることや、その収集を研究者自身ではなく、専門機関が行うことの重要性を実感してきました。
この経験をバイオバンクセンターのマネージメントに活かし、円滑に運用していくことが当センターでの私の役割です。患者さんのご理解を得ていくだけでなく、臨床現場の医師にもバイオバンクの意義や重要性を知ってもらう必要があります。また、利用する研究者や作業メンバーの利便性や効率性を高められるシステムの構築も進めています。
患者さんをはじめ、医師や研究者など、ここに関わる様々な方々との関係を通じて、三重大学バイオバンクセンターが将来の医療発展の一翼を担うことを願っています。