それ行け!三重大病院(診療科・部門紹介)

高度救命救急センター ― 最先端の高度救急医療の提供に向けて ―

2010年6月から地域の三次救急を担ってきた三重大学病院の救命救急・総合集中治療センター。2024年4月、県内第一号目の「高度救命救急センター」に指定され、その名称も「高度救命救急・総合集中治療センター」になりました。
広く高い専門性が揃わなければ機能しない領域で、引き続き、“大学病院として最先端の医療を提供する”というセンターの理念を掲げています。そして、それを支えるのが、診療科間の強い連携や人を大切にする人材育成です。
さらに、同じ時期、津市内の救急体制のサポートを行うことも決めました。
アップデートし続ける当院の救急医療の最前線の今を、石倉副センター長に聞きました。
それ行け!三重大学病院。それ行け!高度救命救急センター。地域の救急医療を守るために。

高度救命救急・総合集中治療センター
副センター長・講師 石倉 健

高度救命救急センターの指定

「高度救命救急センター」は、高い医療技術が求められ、指定要件がかなり厳しいです。

「高度救命救急センター」は、広範囲熱傷、指肢切断、急性中毒など、とても難易度の高い救急の症例に対応できる施設として、厚生労働大臣が指定するものです。今回、私たちセンターがその指定を受けたのは、これまでの実績が評価された結果だと考えています。

多発外傷、心肺停止、急性心疾患、急性脳疾患など様々な重症患者さんを受け入れてきた中で、重症例で起こりやすい多臓器不全を回避するための全身管理の技術を高め、また、症例ごとに専門的な医療を提供できるよう、形成外科、皮膚科、整形外科、心臓血管外科、精神神経科などとの連携を強化してきました。
その結果、現在、当センターで対応できる症例は大きく広がっています。

加えて、救命救急を担う人材育成が少しずつ軌道に乗り始めていることも、今回の指定において大きいと思います。

高度救命救急センターとなり、何かチームで共有している想いはありますか。

私たちは、以前から、センターでの理念を設定しているのですが、そのひとつが、「大学病院として最先端の医療を提供すること」です。

地域のフラッグシップとなる高度救命救急センターとなり、大学病院だからこそできる救急医療をしっかり行いたいという想いをこれまで以上に強くしています。

三重大学医学部附属病院
高度救命救急・総合集中治療センター


理念
1. 大学病院として最先端の医療を提供すること
2. 地域の医療を守っていくこと
3. 仲間を育成し、その人材を燃え尽きさせないこと

実際に、受け入れる患者さんの重症度が上がり、治療にますます時間や技術が必要になるケースが増えました。
より広範な視点を持ち、チームとしての技術を高められるよう、毎朝夕のカンファレンスでは、新しい視点の意見を積極的に出し合い、チーム全員で一人ひとりの患者さんの治療にあたるようにしています。

高度救命救急では、迅速であるだけでなく、相応の専門医療を提供できる体制がより重要になると思いますが。

三重大学病院には、診療科間の垣根が低いという大きな特徴があり、当センターもすべての診療科とすぐに連携できる体制ができています。

もう一つ、私たちセンターの特徴に、大学病院では珍しい「病院前―救急初期治療室(ER)―集中治療室(ICU)」の隔たりがない診療スタイルをとっているということがあります。

病院前の搬送時から救急救命士と連携し、搬送後に専門医療へスムーズに移行させ、院内ではICUの全身管理に迅速につなぐ。これにより、「診療強度の高い集中治療型救命救急」を行える体制ができているのです。

ステージごとの医療が途切れないようなシステムができているのですね。

先ほども触れたように、このシステムには病院前や院内の各診療科の協力と連携が欠かせません。

かといって、病院全体の診療を考えれば、各診療科に負担をかけすぎるわけにはいかないので、できるだけ特殊な専門治療だけを担当してもらうよう、急性期治療についてはセンターで行うよう尽力しています。

しかし、これにより、若手医師が各科専門領域での治療方針、処置や手術などを習得する機会を得やすくなり、救急専門医の育成にもつながってきています。

地域の救急医療を守る取り組み

厚生労働省が全国の救命救急センターの質の向上を目的に行っている「令和5年救命救急センター充実段階評価」で、三重大学病院のセンターはS評価を受けました。

この充実段階評価では、専従医師数、受け入れ患者数、診療体制、医療従事者への教育などが評価対象となります。

今回のS評価は、特に、専攻医の増員や各診療科との協力体制の強化をさらに進められたことが大きかったと考えています。今後もあらゆる項目で充実度を高めていきたいと思います。

伊勢赤十字病院と共同運航を行うドクターヘリでは、奈良県や和歌山県に出動することもある。

もう一つ、高度救命救急センター指定と同じタイミングで、津市内の救急受け入れについても週7日バックアップすることを決めました。その背景は何だったのですか。

当センターの二つ目の理念は、「地域の医療を守っていくこと」です。

三重大学病院がある津市には、市民病院がなく、そのことが、市内の救急医療の弱みになっています。こうした中で、救急医療を維持するためには、救急隊員や各病院の医療スタッフが疲弊せず、安心感を持って従事できる環境が実はとても重要です。

当院が、搬送先としてバックアップに入ることで、その安心感になるとともに、市全体での救急車受入れ件数の増加や、搬送先の迅速な確保による救急隊の現場滞在時間の短縮につながっていけば、結果として、地域の治療成績の向上が期待できると考えています。

そのために各医療機関との連携をさらに強化し、津市内だけでなく、県全体でのよりよい救急医療体制つくりを目指していきます。

地域の救急医療の進化に向けて、今後さらに注力しようと考えていることはありますか。

当センターには、もう一つ理念があります。それは、他の二つの理念を実現するためにも決して欠かせない、「仲間を育成し、その人材を燃え尽きさせないこと」です。

実際、私たちが力を入れているのは、若い人材が憔悴することなく、やりがいを持って、興味を追求し、質の高い技術や知識を得られるようにサポートすることです。

例えば、診療難度が高い環境下だからこそ、シフト勤務を維持したり、他診療科の医師の支援を通じて、専門医療を学べる機会を提供することなど、私たちが目指すのは、単なる人材育成ではなく、高度な救急医療を共に実践するチームの仲間づくりだと捉えています。

その仲間づくりは、外にも広がっているとか。

去年から、県内の消防署から出向してくれているトップレベルの救急救命士たちとの活動がスタートしました。

この救急救命士を「ハイブリッド・ワーク・ステーション(HWS)」と呼んでおり、毎朝夕のカンファレンスへの参加や院内の救急外来への対応だけでなく、重症患者さんの医療機関間の移動などに対応してもらっています。能登半島地震の被災地にもDMATとして派遣し、活躍していただきました。

HWSの一番の目的は、当センターで症例の評価や治療について学び、さらに質の高い活動を地域の医療に還元してもらうことです。

これまでに計6名の救急救命士がHWSに出向し、現在はこの3名が活躍中(写真左から、櫻井ドクターカー運転手/元救急救命士、中邨救急救命士、石倉医師、上原救急救命士)。

ますます多くの役割を担う三重大学病院の高度救命救急センターとして、地域の皆さんへのメッセージがあれば、お願いします。

いつも三重大学病院の高度救命救急・総合集中治療センターへのご支援をいただきありがとうございます。搬送されてきた方々から、退院のとき、ときどきお褒めの言葉をいただき、それが私たちのモチベーションになっています。

三重大学病院だけですべての救急患者さんを受け入れることはできませんが、他の救急外来や消防署と連携していますし、地域全体の救急医療が最大限の効果を発揮できるよう常に改善をし、システムの構築を進めています。

引き続き、みなさまのご理解とご協力をよろしくお願いいたします。

No.14が本人

高度救命救急・総合集中治療センター
副センター長・講師
石倉 健

甘味・辛味どちらも好きですが、辛いものを食べるとすぐ汗をかきます。趣味は、モータースポーツで、観戦だけでなく、自らレンタルカートでレースにも出場するほど。オフへの切り替えは、帰宅してペットの猫や犬とふれ合うことです。
救命救急は、個人的な特殊技術が発揮できるだけでなく、現場の救急隊・救急救命士から各専門領域の医師、看護師、技師などを含めた究極のチーム医療により、奇跡的な救命が行われることが醍醐味です。逆に、これを「当たり前」にしようとすると壁にぶち当たります。
現場の瞬間瞬間が救急専攻医への指導のチャンス。それを通じて、ますますレベルの高い専攻医が育っていることを最近うれしさとともに実感しています。
私自身もすべての方に救命のチャンスを与えられることを目指していきます。

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