病棟火災避難訓練【実働訓練編】
- 2024-5-8
- 医療と防災
- #災害拠点病院, #災害対策推進・教育センター, #災害医療, #火災訓練
当院が想定する災害の一つに火災があります。火災は、一次災害として発生するだけでなく、地震などの自然災害の二次災害として発生する可能性もあります。能登半島地震の際、輪島市で起こった大規模な火災はこの二次災害に当たります。
また、火災は、火よりも煙がより怖いと言われ、万が一の際には、火だけでなく、煙への対応も迅速に行うことが求められます。
当院では、消防法に基づいて年2回以上の火災訓練を行い、いざというときに職員全員が迅速な消火や患者さんを火と煙から守る避難誘導ができるよう備えています。
「医療と防災」の16回目は、火災訓練の大切さを改めて考えながら、11月に行った病棟火災避難訓練についてご報告します。
防災センタースタッフが経験した火災事案の教訓 ~ 訓練の大切さを改めて痛感 ~
当院では万が一の火災に備えて多様な訓練を行っていますが、実際の火災現場に遭遇したことがある人は決して多くありません。そのため、火災事案経験者の体験談は貴重なものです。
今回はまず、当院の防災センターに勤務しているALSOK三重の上西寿美雄さんにお聞きした実際の火災事案についてご紹介します。
「三重大学病院の防災センターでは、ALSOK隊員全21名が交代勤務を行い、24時間365日、防犯・防災に対処しております。特に火災事案については、患者さんや職員の皆さんの生命と財産を守るために、日頃から訓練を重ね、有事に対応できるよう心しております。
私がこれまでに経験した火災事案の一つが、警備契約先で起こった深夜の火災です。火災警報を受信した私は、直ちに現場に急行しましたが、既に建物内に煙が充満し、1メートル先が見えないほどでした。酸素マスクを装着して、やっとのことで火点を見つけ、初期消火を行い、鎮火しました。しかし、その後、煙による喉の痛みが1週間ほど続き、煙の恐ろしさを身をもって体験いたしました。
また、煙の中では、消火活動、そして避難誘導を低い姿勢で行わなければならないことをはじめ、日頃からの訓練がとても大切であることを改めて痛感しました」
上西さんには、こうした火災事案の経験者や防災警備のプロといった立場で、当院が行う多くの防災訓練に参加していただいています。
3病棟での火災避難訓練
11月の訓練は、5階南病棟、6階北病棟、9階北病棟の3病棟で実施され、医師・看護師の他、薬剤師や栄養士、事務職など計121名の職員が参加しました。
普段はほとんど稼働することのない病棟の防火シャッター・防火扉を実際に作動させるなど、なるべく本当の火災発生時に近い状況を設定して、より臨場感のある訓練としました。
訓練開始
火災発生を確認したら、火災発見者はまず「火事だー!」と大声で叫び、周囲の人に危険を知らせることが鉄則です。そして、火災報知器を押して通報し、すぐに消火器や消火栓で初期消火を行うこととなっています。
訓練でも、同様の初動から始まりました。その後、火災発生の知らせを聞いた職員は、役割分担を行い、それぞれのアクションカード(役割ごとの優先順・時系列に沿った行動指標を示したカード)に従って現場の指揮をとりながら、安全確認や避難誘導を行いました。
患者さんの搬送
病院には様々な疾患を抱えた患者さんが入院されています。歩行が困難であったり、人工呼吸器を装着していたり、自力で動けない患者さんが安全にかつ迅速に避難できるように、シーツやエアストレッチャーを使用した移送方法も実践しました。
*エアストレッチャー
傷病者のスムーズな緊急搬送を目的として開発された自吸式万能担架です。
持ち運びやすく、スライドすることで少人数での移送が可能になります。
水平避難と垂直避難
火災現場では、同じ階で火元から離れるように移動することを「水平避難」、下階に移動することを「垂直避難」といいます。
初期消火で鎮火できず、炎が燃え広がった場合(=延焼)など、速やかに垂直避難を行う必要があります。
今回の訓練では、まずは病棟での水平避難をした後、屋外非常階段を下り、最終避難場所である正面玄関駐車場まで垂直避難しました。
避難完了後、正面玄関前に設置された火災対応本部へ最終避難人数を報告して訓練を終了ました。
参加者の声
訓練終了後のアンケートでは、「訓練に実際に参加することで、避難の流れのイメージがより明確になり、参加してよかった!」、「防火シャッターでナースステーションの中と外が遮断された状態でのスタッフ間の連携の難しさを身をもって感じた」といった声が聞かれ、日常業務では触れる機会の少ない火災対応について考えるきっかけにもなったようでした。
上西さんのコメントにもあった、訓練の大切さを改めて痛感するという実際の火災現場。火災の予防はもちろんですが、二次被害としての火災を含め、どのような状況下であっても迅速に対応できるよう引き続き有意義な火災訓練に取り組んでいきたいと思います。
災害対策推進・教育センター 担当:[はるか]
三重大学病院は、万が一の災害時に地域の救急医療を担う「災害拠点病院」に指定されています。
災害発生時に、災害による負傷者への対応だけでなく、入院患者さんの医療を継続するという複数かつ重要な役割を適切に実行できるよう、当院では平時から様々な取り組みと準備を行っています。
Online MEWS「医療と防災」では、当院の防災対策やみなさんに役立てていただける防災のヒントをお伝えしています。