超音波センター
三重大学病院には、様々な診療科で活用されている超音波検査(エコー検査)に関わる知見を集約し、診療における専門的かつ高度な運用を担う「超音波センター」があります。
今年、当センターに、内田副センター長が着任。メディカルスタッフの目線を加え、より多角的に臨床・診断・研究に関わることが抱負だというその視点から、センターの役割や取り組みの紹介をしてもらうことにしました。
それ行け!三重大学病院。それ行け!超音波センター。患者さんのより効果的な治療を支えるられるように。
超音波検査とは
超音波検査は、一般的に「エコー検査」とも呼ばれています。体の表面に超音波(高い周波数の音)が出る器機をあて、体内で反射して返ってくる超音波を画像にすることで、体内の状態を調べる検査です。
超音波検査の最も優れた点は、患者さんに痛みや被曝などの侵襲が全くないことです。リアルタイムに、繰り返し検査することができる極めてフットワークの軽い検査法であります。
主に心臓・血管、腹部臓器(肝臓・胆嚢・膵臓・腎臓など)、乳腺、甲状腺などを対象に、スクリーニング検査、疾患の原因の精査、術前の詳細な評価、術後の経過観察など広範な臨床ニーズに応えています。
超音波センターの役割
こうした特長のある超音波検査に特化するべく設立された三重大学病院の超音波センターは、臨床、教育、研究の分野で様々な役割が求められています。
まず、臨床では、患者さんの病変や病態を正確に評価して、精度の高い診断から治療につながる超音波検査を行うこと。そして、治療後は、その経過を慎重に観察して、データとして蓄積していくことです。
教育では、学生、研修医、新人臨床検査技師の初期教育研修を行うことに加え、三重大学病院内にとどまらず、関連病院から臨床検査技師(Sonographer)の受け入れ体制を整えることも大切な役割です。
また、研究に関しては、超音波診断装置の目覚ましい進化に即したアイデアと探究心をもって、新たな知見を積み上げる努力と研鑽を重ねていくことが求められています。
以上のように文字にすると堅苦しいのですが、臨床における患者さんの治療への貢献はもとより、教育や研究における無限大の可能性を引き出せるよう、楽しくがんばれる環境をつくり、当院の基本理念である「信頼と安心が得られる地域医療の拠点として、未来を拓く診療・研究を推進し、人間性豊かな優れた医療人を育成する」をセンターとしても実現していきたいと考えています。
臨床検査技師と医師の連携
超音波センターの体制は、より専門的な超音波診断を行えるよう、医師と臨床検査技師とが密に連携できるようになっています。
循環器領域では、臨床検査技師による超音波検査の結果に対して、土肥教授を筆頭に3名の超音波専門医が確認を行い、連携して診断のための評価を行っています。
また、消化器領域では、より効果的な超音波検査の実施を目的として、杉本和史教授から、画像と実際の病状を紐づけた専門的な指導を受けられるようにしています。
高機能な診断装置
超音波センターで使用している超音波診断装置については、質の高い医療を提供する地域の拠点病院として、ハイエンドなものを揃え、時代のニーズにあった、あるいはリードするべく検査を施行しています。
こうした高機能な装置を活用し、肝臓に対する肝線維化定量評価(Share Wave Elastography)、肝脂肪化定量評価(Attenuation Imaging)など、専門的かつ先駆的な解析も行えるようになっています。
専門的な知見と装置が揃う当センターの環境は、臨床だけでなく、教育や研究にとっても非常に恵まれたもので、大きな成果につながると期待しています。
循環器領域における活用の拡大
当センターでは、新生児から超高齢者まで、様々な疾患の診断のために超音波検査を受けていただけるようになっています。
特に、循環器領域における活用が活発です。例えば、心臓の右左の心房の間にある心房中隔に先天的に孔が開いている構造的心疾患では、非侵襲的治療が盛んに行われていますが、精密な治療方針決定のために超音波検査(経胸壁心エコー検査や経食道心エコー検査)が多く実施されています。
また、カテーテル治療は、超音波画像で心臓の状態を見ながら行われます。僧帽弁閉鎖不全症に対する経皮的僧帽弁クリップ術や左心耳部分の血栓の形成を予防するための経皮的左心耳閉鎖術、さらに重症大動脈弁狭窄症に対する経カテーテル大動脈弁植え込み術(TAVI)などの際は、術前のみならず、術中にもモニタリングのために同センターのエコー医メンバーがチームに参画しています。
さらに三重大学病院には、心不全および肺高血圧の発症に関する研究成果が多くあるため、関連の患者さんも三重県各地から多く来られています。この分野に対しては、運動負荷心エコー検査に積極的に取り組み、県内では最高水準の心不全の細かい分類や右心系機能評価を行っています。
先天的な複雑心奇形の外科的手術前後の評価や外科治療成績の向上に伴い、先天性心疾患の成人患者さんが増加傾向にあるため、極めて複雑な症例を対象とするケースも増えてきています。
より幅広い領域への貢献
循環器領域だけでなく、各診療科との連携が広がっています。
近く、消化器・肝臓内科との定期的なカンファレンスも計画しており、同科が取り組む「三重県膵がん早期発見プロジェクト」にも、一助になれるよう、積極的に参画したいと考えています。
また、10月から、小児および成人の心奇形などの診断方法をテーマに、循環器内科と共に取り組む『A&C Echo コラボカンファレンス(Adult & Congenital Echocardiography Collaborative Conference)』も立ち上がりました。
この他にも、血管ハートセンターと連携し、末梢動脈疾患に対する超音波検査の精査および超音波を活用した治療やカテーテルによる経皮的経管的血管形成術に参加したり、超音波センターの臨床検査技師が乳腺センターに出向し、超音波診断を活用しながら乳腺腫瘤の精査や治療後の経過観察をともに行ったりしています。
超音波センターの今後の目標
このような当センターの体制やいろいろな診療科との連携を通じて、今後はさらに超音波検査の進化や人材の育成に力を入れていきたいと考えています。具体的には、次の5つの目標を掲げています。
- 日常診療における業務効率化を通じた、患者さんメリットを向上させる。
- 三重県下唯一の特定機能病院として、超音波検査に関する臨床研究を活発化させ、論文や学会発表に積極的に取り組む。
- 明るく楽しい、そしてワークバランスの取れる開かれた超音波センター作り、次の世代の優れた臨床検査技師を育成する。
- 構造的心疾患に対する術前・術中モニタリングの補助など超音波の活用を進める。
- 救命救急における外傷に対する迅速簡易超音波検査法(FAST)や観察対象を絞って短時間で行う超音波検査(POCUS)への参画体制をつくる。
これらの目標に向かって取り組み、三重大学病院ならではの優れた超音波センターに育てていきたいと思います。
患者さんへ
超音波検査は、患者さんにとても優しい検査です。少し時間がかかるかもしれませんが、それはしっかりと検査させてもらっているからです。
また、私たちSonographerは異動があまりなく、ずーっと長い期間にわたって診させていただきますので、これからもよろしくお願いします。
超音波センター
副センター長 臨床検査技師・超音波検査士
内田文也
三重県松阪市出身。松阪と言えば牛肉ということで、焼肉、すき焼き、あみ焼き、ホルモンが好物です。松阪高校で甲子園を目指していた高校球児をルーツとする、いわゆる昭和の体育会系です。
最近の一大トピックは、今年、この歳(?)で三重大学医学部附属病院に来たことです。前職では、昭和体育会系発想で「最近の若いものは・・・。多様性を受け入れるしかないか」と言っていた側だったのに、三重大学病院でお世話になることになり、「みんなになんて思われるだろう???」と不安で立場が逆転しました。しかし最近は、優しいスタッフの皆様に、ことあるごとに声をかけていただき、「あっ、そうか、逆多様性もありなんだぁ!受け入れてもらおう」と思えるようになりました。
超音波センターの発展に力を尽くしていきますので、これからも、どうぞよろしくお願い申し上げます。