CANCER MEWS(キャンサーミュース)

脳腫瘍

脳神経外科
病棟医長・助教 北野 詳太郎

脳腫瘍とは

脳腫瘍とは、どういった病気なのでしょうか。

脳腫瘍とは、脳にできる“しこり”の総称です。できる場所は、脳そのものの細胞、脳を包む膜、神経、下垂体などさまざまです。

そうした脳腫瘍は大きく「原発性脳腫瘍」と「転移性脳腫瘍」の2つに分けられます。

原発性脳腫瘍は、脳の中で最初に発生する腫瘍で、良性と悪性の両方があります。

一方の転移性脳腫瘍は、他の臓器(肺・乳房など)にできた“がん”が脳に転移したものです。つまり“がん”細胞が脳に飛んできて、しこりになったものであるため、悪性です。

原発性の場合、良性か悪性かに分かれるとのことですが、特徴も違うのですか。

良性腫瘍の場合は、ゆっくり大きくなります。脳を包む膜(髄膜腫)、神経(神経鞘腫)、下垂体(下垂体腫瘍)などにできる腫瘍が代表的なものです。

悪性腫瘍の場合は、どんどん周囲へ広がるように大きくなり、進行が速いのが特徴です。中でも、脳そのものの細胞にできる「神経膠腫(グリオーマ)」や「転移性脳腫瘍」が代表的なものです。

早期発見につながる自覚症状というのはありますか。

良性か悪性かに関わらず、脳腫瘍の症状は、腫瘍がどの場所にあるか、どのくらいの大きさかで変わります。

一般的には、腫瘍による圧迫や刺激によって起こる持続的な頭痛、吐き気、手足のしびれ、けいれん、視野の欠け、もの忘れなどの症状が主に見られます(図表1)。

ただし、「この症状があれば早期発見できる」という特有の初期症状は明確でないため、先ほど挙げたような症状があれば、ためらわずすぐに医療機関を受診することが結果的に早期発見につながります。

図表1 脳腫瘍の主な症状

脳腫瘍は小児に多いという印象があります。大人の脳腫瘍との違いはあるのですか。

子どもの脳腫瘍は、小児がんの中で白血病に次いで多い“代表的ながん”で、一般的に悪性のことが多いです。

また、子どもと大人では発生しやすい腫瘍の種類が異なり(図表2)、治療方針も変わってきます。

【子ども】 髄芽腫、上衣腫、胚細胞性腫瘍など
【大 人】転移性脳腫瘍、膠芽腫、髄膜腫(良性が多い)、下垂体腫瘍(良性が多い)など
図表2 子どもと大人に発症しやすい脳腫瘍

脳腫瘍の治療

治療はどのように行われるのでしょうか。

先ほどお話したように、子どもの脳腫瘍は悪性のことが多く、治療は手術・放射線・薬物の治療を組み合わせることが一般的です。よって良性である場合も多い大人の脳腫瘍と治療方法が異なることもあります。

特に子どもの場合は、脳が発達途中のため、放射線治療の量や範囲の工夫が必要です。薬物療法においては、腫瘍細胞の種類に合わせて抗がん剤を選択します。

また当院では、一人ひとりのがんのゲノム情報に基づいて、個別に治療を選択していく「がんゲノム医療」も最近盛んに行っています。

将来、治療により生殖機能が影響を受ける可能性がある場合には、治療の前に自分の子どもをもつ可能性を守るための「がん生殖医療(妊孕性温存療法)」を行うこともあります。

治療法はステージや部位などによっても変わるのですか。

脳腫瘍は他のがんのような「ステージ分類」を用いておらず、腫瘍の種類・できた場所・患者さんの年齢や体力などを総合的に判断して、治療を選択しています。

特に「原発性か転移性か」「腫瘍の悪性度(WHO分類)はどれくらいか」「手術で安全に取れる位置かどうか」が治療方針に大きく影響します。

早期発見・早期治療が予後に関わってきますか。

悪性腫瘍の場合、腫瘍の種類によりますが、早期に治療を開始することで“寛解”や“長期の病状コントロール”が可能になる例もあります。

近年は治療技術の進歩により、治療成績は向上しています。

図表3 脳腫瘍(悪性)に対する治療方針における検討条件

一方、良性の場合には、どのような治療が取られるのでしょうか。

基本的にはそのまま何もせず、様子をみる「経過観察」ということが大半です。

しかし良性腫瘍でも、場所によっては頭痛や手足が動かしにくいといった症状を引き起こすため、治療が必要になることがあります。

治療は可能な範囲で安全に摘出する手術が一般的で、完全に取り除ければ完治が期待できるケースが多いです。

手術が難しい場所や取り切れなかった部分に対しては、放射線治療を行うことがあります。

三重大学病院における脳腫瘍の診療体制

三重大学病院ではどういった体制で脳腫瘍の診療を行っているのですか。

治療については、脳神経外科、放射線科、小児科、病理科、がんゲノム科をはじめ、各腫瘍科と連携してあたっています。カンファレンスもこれらの科の専門医らが合同で開催しています。

また、リハビリテーション科、緩和ケアチーム、看護師、薬剤師、臨床心理士、ソーシャルワーカーも含めたチーム医療を行い、治療や病状、患者さんのご希望に合わせてきめ細やかなケアやサポートを提供できるようにしています。

退院後についても安心して生活ができるように、院内だけでなく、地域の医療施設とも連携しています。

高難度な手術に対応できるのもそうした体制があるからですか。

三重大学病院は、高難度な手術、あるいは患者さんの負担が少ない低侵襲手術を含む多様な脳腫瘍に対する診療実績が豊富です。

先にお話した通り、脳腫瘍はステージによる分類ではなく、一つひとつの症例を総合的に判断し、最適な治療を組み合わせて、実施することが求められます。

そういう意味でも、MRIやPET-CTや病理検査での的確な診断力が欠かせませんし、手術と放射線・薬物治療を組み合わせる場合にも、あるいは小児から成人まで成長に合わせたロングスパンでの診療にもチーム医療は不可欠となります。

また、当院では、手術支援ナビゲーション、内視鏡手術、光線力学治療、定位放射線治療など高度な医療設備も整備しています。

こうした体制によって、多様な脳腫瘍の症例に対し、手術だけでなく総合的な診療を行えるのが、当院の特徴だと思います。

様々な診療科の専門医によるカンファレンスで一つひとつの症例の治療方針が議論される。

では最後に患者さんにメッセージをお願いします。

病気や症状に向き合うことは、不安や戸惑いの連続だと思います。どんな些細なことでも構いませんので、気になることがあれば遠慮なくご相談ください。

一人ひとりの患者さんと真摯に向き合い、少しでも安心して治療を受けていただけるよう、これからも努めてまいります。

脳神経外科
病棟医長・助教 北野 詳太郎

座右の銘は「思い立ったが吉日」です。医療の現場では迅速な判断が求められる場面も多く、迷ったときこそ行動に移すことを大切にしています。
また、医師として大切にしていることは、その患者さんが自分の家族と思って、親身になって診察・治療にあたることです。病気だけでなく、患者さんの生活背景やお気持ちにも目を向け、納得して治療を受けていただけるよう丁寧な説明を心がけています。

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