健康診断結果の見方シリーズ⑦「BUN・クレアチニン・eGFR」
たくさんの項目や数値が並んでいる健康診断結果。専門用語や略語も多く、それぞれの数値をどう理解したらいいのかわかりにくいものです。
そこでOnline MEWSの健康アドバイスでは、「健康診断結果の見方シリーズ」として主なものを解説しています。
1日かけて受けた健康診断、それぞれの数値や変化の意味をしっかり確認して、その後の健康管理や病気の早期発見に最大限活用しましょう。
シリーズ7回目は、「BUN」「Cre(クレアチニン)」「eGFR」を取り上げます。
いずれも血液から腎臓の状態を知らせてくれる大事な項目です。

無症状でも放置しないために知っておきたい腎臓の検査値
健康診断の結果に「BUN高値」「クレアチニン高値」「eGFR低下」などと表示され、指導欄に「腎臓に異常があります。医療機関を受診してください」と書かれていたという方もいると思います。
ただそれを見ても、どう腎臓が悪いのか、どういう状態なのかわからず、不安になったり、反対に、特に何も困った症状も出ていないし、仕事も休めないから、受診するのはまた時間ができたときでいいかなと考えている方もいるかもしれません。
腎臓の病気は初期から中等度の段階では自覚症状が出ないことがとても多いです。体調がいつも通りのように感じていても、検査値は大きく変化していることがあります。
だからこそ、健康診断で腎臓に関係する数値を指摘された時は、「症状がないから大丈夫」と考えず、一度立ち止まって確認することが大切です。
そこで、この記事では、BUNとクレアチニン、eGFRそれぞれの意味や違いを説明しながら、健診結果を見た後にどのように行動すればよいかを整理していきます。
BUN、クレアチニン、eGFRはどれも腎臓に関係する検査値
腎臓は、血液中の老廃物をこし取り、尿として体の外へ出す臓器です。
BUNとクレアチニンはどちらも体の中で作られるもので、腎臓から尿へ捨てられる老廃物に関係する検査値です。つまり、腎臓の働きが落ちると、これらの老廃物を十分に外へ出せず、血液中の値が高くなることがあります。
それぞれの項目についてもう少し詳しく見ていきましょう。
BUNとは
BUN (Blood Urea Nitrogen)は「血中尿素窒素」の量を調べる検査です。
これは、たんぱく質が体の中で使われた後にできる尿素という老廃物の一部で、血液に乗って腎臓へ運ばれ、尿として排泄されます。そのため、腎臓の働きが低下し、尿素が十分に出せなくなるとBUNが高くなります。
クレアチニンとは
一方、クレアチニンは、筋肉で作られる老廃物です。こちらも血液に乗って腎臓へ運ばれ、主に尿として排泄されます。
腎臓の働きが低下すると、クレアチニンを外へ十分に出せなくなり、血液中のクレアチニンが上がります。よってクレアチニンは、腎臓の働きを見るために広く使われている検査となっています。
健診結果には、「Cre」または「Cr」と表示されることもあります。

eGFRとは
クレアチニンとともに「eGFR」(estimated Glomerular Filtration Rate)が結果項目として並ぶことがあります。
eGFRは「推算糸球体濾過量」といい、クレアチニン、年齢、性別から計算した“腎臓が血液をろ過する力”の目安です。
BUNやクレアチニンが血液中のそれら老廃物の量を示している一方、eGFRは老廃物そのものではなく、腎臓の働きを知ることのできる数字です。
ちょうど「100点満点の腎臓のテストの点数のようなもの」と考えるとイメージがわきやすいです。実際にはそういう数字ではありませんが、このように考えるとわかりやすいのではないかと思います。
eGFRが診断結果にない場合は、下記のサイトで年齢・性別・クレアチニンの値を基に調べることもできます(18歳以上の方)。ただし、現時点での正確な数値は、医療機関で血液検査を受けていただくことをおすすめします。
日本腎臓学会のサイト https://jsn.or.jp/general/check/
結果の見方
1)BUNのみが高いとき:腎臓以外の影響もあり得えます。
冒頭でお伝えしたように、BUNが高い場合は、腎機能低下を疑うきっかけになります。
ただし、BUNは腎臓だけで決まる数字ではありません。たとえば、脱水で血液が濃くなっているとき、食事内容の影響があるとき、腎臓へ届く血流が落ちているときなどにも、BUNがクレアチニンに比べて高くなることがあります。
また、消化管出血など、腎臓そのものとは別の病気でBUNが高くなることも知られています。
このようにBUNの値の判断は複雑です。そのため患者さんが健康診断の結果を見る時に大切なのは、BUNの原因を細かく自己判断することではありません。BUNが高いと書かれていたら、要再検査や要受診の記載がないかを見ることです。
2)クレアチニンが高いとき:受診につなげる大事なサインです。
血液中のクレアチニンが高い場合、腎臓から老廃物を出す力が低下している可能性があります。
ここで注意したいのは、クレアチニンが少し高い段階でも、自覚症状がないことが多いという点です。腎臓病は、痛みやだるさなどの症状が出てから気づく病気とは限りません。むしろ、症状がない時期に健康診断で見つかることのほうが多いです。
そのため、「体調は悪くないから大丈夫」「少し高いだけに見えるから来年まで様子を見よう」と自己判断してしまうと、受診のきっかけを逃すことがあります。
健康診断の結果で医療機関受診がすすめられている場合は、きちんと受診するようにしましょう。
また、前述のように、クレアチニンは筋肉で作られる老廃物であり、筋肉量の影響も受けます。筋肉量が多い人では高めに出たり、逆に筋肉量が少ない高齢の方や痩せた方では、腎機能が低下していてもクレアチニンが目立って高くならないことがあります。
だからこそ、クレアチニンだけを一つの数字として見るのではなく、尿検査などの他の検査や前回との変化などから複合的に判断する必要があります。
また、このようなクレアチニンの特徴から、腎機能を評価する際にはクレアチニンを年齢や性別を用いて「補正」を行うことがあります。その時に活用するのがeGFRです。
3)eGFRは低いほど腎臓が悪化していることを示します。
eGFRは腎臓が血液をろ過する力の目安を示すものだと前述しました。
たとえば、eGFRが60未満の状態が3か月以上続けば、慢性腎臓病と診断できます。
10〜15前後まで低下すると、値だけで透析が決まるわけではありませんが、透析や腎移植の準備が必要な段階になってきているといえます。
さらにeGFRが15を切ることは、慢性腎臓病のステージ5といって、一番進行したステージになってきていることを意味します。
こうした腎臓悪化のリスクに少しでも早く対処し、それ以上の悪化を阻止するために、健診でeGFR低下を指摘されたときには、症状がなくても指示されたように医療機関を受診することがとても大切です。
ただし、eGFRも推算値です。その年齢・性別の一般的な方に比べて、筋肉量が極端に多い、または少ない場合では、実際の状態とずれることがあります。
また、腎臓の評価ではeGFRだけでなく、尿蛋白や尿アルブミンも重要です。これについては、健康診断結果の見方シリーズ③「尿蛋白・尿潜血・尿糖」の記事もご参照ください。
健診結果で受診をすすめられたら
BUN、クレアチニン、eGFRの異常を指摘された時に、患者さん自身が原因を細かく判断する必要はありません。
大切なのは、健診結果に「要再検査」「要精密検査」「医療機関を受診してください」などの記載があるかどうかを確認することです。そして、そう書かれている場合は、体調がいつも通りでも、医療機関で必ず相談してください。
腎臓の病気は、自覚症状がない時期に検査で見つかる場合のほうが圧倒的に多いです。
受診するときは、過去の健診結果の用紙を持参すると、クレアチニン、eGFR、尿検査などを合わせて確認しやすくなります。
まとめ:症状がないうちに見つけるのが健診
BUNとクレアチニンは、どちらも腎臓に関係する検査値です。
BUNは腎機能低下で上がることがありますが、脱水など腎臓以外の影響も受けるため、単独で判断しすぎないことが大切です。一方で、クレアチニン高値やeGFR低下は腎機能低下を疑う重要なサインです。
腎臓病は症状がないまま見つかることがあるため、健康診断で異常を指摘された時点で躊躇わずに医療機関を受診する意味があります。
「症状がないから大丈夫」ではなく、「症状がないうちに見つけて早期の治療につなげるのが健診の意味」と考えてください。
健診結果に腎臓の数値異常があれば、前回値、eGFR、尿検査を確認し、記載されている指導に従い医療機関へ相談しましょう。

腎臓内科
助教 齋木良介
3人の息子達の父で、コーヒー好きです。
外来で腎臓病の患者さんから「コーヒーやめた方がいいですか」と聞かれたりしますが、コーヒーの良い点も悪い点もあるので、検査結果などみながら相談しています。
慢性腎臓病は、薬だけでなく日々の行動の選択で経過が変わる分野です。診療では「これはダメ」で終わらせず、代わりにどうするかを一緒に考えていくことを大切にしています。
「健康一言アドバイス」では、医療や健康など皆さんに身近な疾患や気になる話題を取り上げ、その領域の専門家がわかりやすくお伝えしています。






