乳腺センター 新センター長
乳がんをはじめとする乳腺関連疾病の診療を行う三重大学病院の乳腺センター。診断と治療、さらに乳房再建まで、複数の診療科の連携を通じた集学的かつ専門的な診療を提供するとともに、三重県内の乳がん治療の拠点としての役割を担っています。そのことから、「乳腺科」ではなく、「乳腺センター」と名付けられています。
ここに、2024年元旦付で新しいセンター長が就任しました。今回のVOICEは、その河口浩介新乳腺センター長です。
それ行け!三重大学病院。それ行け!河口乳腺センター長。患者さんにとって本当によい治療を届けるために。
乳腺センター センター長 | |
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乳腺外科学 教授 | 河口浩介 |
三重大学病院の乳腺センター長としての抱負を聞かせてください。
現時点で目標としていることは、大きく3つあります。一つは、これまで15年にわたり三重大学病院の乳腺センター長を務めてこられた小川朋子先生の取り組み、「オンコプラスティックサージャリー」を継承することです。乳がんの根治だけでなく、乳房の整容性、つまり美容的側面にも配慮したこの手術を引き続き当センターの強みの一つとして、さらに発展させていきたいと思います。
二つ目は、難治性乳がんに対するより効果的な集学的治療を確立すること。外科手術、化学放射線療法を組み合わせ、難治性乳がんの治癒率を高められるよう取り組んで行きたいと思っています。
そして、三つ目は、臨床と研究という二つ場を通じて、若手の乳腺科医を育成することです。
乳腺センターが対象とする主な疾患は乳がんです。治療について、女性ならではの悩みや不安を抱える患者さんも多いと思います。診療において、大事にしていきたいことはありますか。
患者さんの置かれている状況をよく把握することです。多くの疾患には、有効性や安全性などの面から最良とされる治療を示したガイドラインというものがあり、医療現場ではそれが治療方針のベースとなります。しかし、ガイドラインにただ沿うだけでは、それぞれの患者さんにとって本当によい治療を届けられるとは限らないと考えているからです。
“よい治療”というのは、人によって違うということですね。
そう思います。病気の状態は言うまでもありませんが、価値観やライフステージなど、その患者さんをいろいろな面から理解することではじめて、その方にとってのよい治療になると思います。
「私が先生のおかあさまだったらどうしますか」と聞かれることがありますが、「今お話しした全く同じ治療法を提案します」と答えています。あたりまえかもしれませんが、目の前の患者さんが自分にとって近しい大事な人であったとしても治療方針の提案がぶれない、つまり、どの患者さんにもその方にとっての最善を考え、提案するようにしています。
今回、乳腺センター長とともに、大学の乳腺外科学の教授にも就任しました。冒頭でも乳腺科医の育成が一つの目標だとお話されていましたが。
大学では、臨床・研究・教育のバランスが重要で、よい臨床とよい研究の実践が、結果的によい教育につながると信じています。
よい臨床には「自分で一例一例大事によく考え調べること」、研究には「新規性、発展性、そして面白さ」が欠かせない要素です。これを重視し、若い先生の成長をサポートしていきたいです。
その中で、三重大学にしか出来ない研究基盤の構築や三重発・日本初・世界初の研究の創出を若手とともに目指していきます。
最後に患者さんにメッセージをお願いいたします。
三重大学病院の乳腺センターでは、乳腺疾患に関し日本トップレベルの診断・手術・薬物療法・放射線治療を提供し続けることを目標に、医師ならびに医療スタッフ全員で今後も取り組んでいきます。
それぞれの患者さんにとっての良い治療を見つけるためにも、不安なことがあれば遠慮なくご相談ください。
乳腺センター センター長
乳腺外科学 教授 河口浩介
伊勢市生まれ。家族みんなで出かけるのが休日の定番の過ごし方で、趣味も家族旅行。キャンプや釣りを好むアウトドア派です。好きな動物は犬。なんでも食べ、飲みますが、特に和食と日本酒が好きです。「継続は力なり、初心忘るべからず」を座右の銘として心に留めています。
医療スタッフや事務職員、外部委託のスタッフを含め、三重大学病院の日々の運営に携わるのは、総勢約2500人。表から、裏から様々な形で関わるその一人ひとりの力や想いが、平常通りの診療を支えています。
安全な診療、優れた診療、質の高い診療、いずれも技術や設備だけでは成し遂げられません。
VOICEのコーナーでは、いろいろなスタッフの声を通して、三重大学病院の診療に欠かせない「人」としての側面をお伝えします。