男性更年期
- 2026-2-9
- いろいろな 病気と治療
- #男性更年期, #更年期障害, #腎泌尿器外科
男性ホルモンの減少によるLOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)
みなさんは、男性にも更年期があり、いろいろな体調不良が起こり得ることをご存じでしょうか。
女性の更年期については、少しずつ社会的な認知が広がってきていますが、まだまだ情報が少ない男性更年期については、原因がわからず、また周囲の理解も得られないまま悩まれている方が多いかもしれません。
働き盛りの40代や50代にも見られるとのことで、経済産業省は「男性の更年期障害は病態が複雑で、まだ十分に解明されていない」とした上で、関連の経済損失は年間1.2兆円だと試算しています*。
そんな男性更年期障害について、三重大学病院では腎泌尿器外科が外来診療を行い、必要に応じて内分泌代謝内科や精神科とシームレスに連携した総合的なサポートを行っています。症状や治療について、大和俊介医師が解説します。
* 経済産業省「女性特有の健康課題による経済損失の試算と健康経営の必要性について」(2024)
腎泌尿器外科 助教 大和俊介
男性更年期障害とは
「年齢のせい」だけではなく、現代社会におけるストレスや生活リズムの乱れも大きく関係
男性の更年期障害とはどのようなものなのですか。
男性更年期障害は、中高年男性に見られる、加齢に伴うホルモンバランスの変化によって起こる身体的・精神的症状の総称です。
同義語の疾患名として、「LOH症候群(Late-Onset Hypogonadism:加齢男性性腺機能低下症候群)」があります。
両者は似ていますが、男性更年期障害は主に「症状による診断」であり、LOH症候群は「血中テストステロン(男性ホルモン)値を測定し、症状も加味して診断」するものです。
ここでは、医学的により明確な定義をもつLOH症候群についてお話しします。
ホルモンバランスのどのような変化が要因になっているのでしょうか。
LOH症候群の原因は、加齢とともに男性ホルモンであるテストステロンの分泌が低下することです。
ただし、生活習慣や心理的ストレス、睡眠不足、過度な飲酒、肥満などもホルモン低下を加速させる要因になります。
つまり、「年齢のせい」だけではなく、現代社会におけるストレスや生活リズムの乱れも大きく関係しています。
男性更年期障害、あるいはLOH症候群は、まだ十分に知られていないように感じます。実際には、多くの男性にあり得るものなのですか。
LOH症候群の発症は決して珍しいものではありません。やや古いデータですが、40代で約10%、50代で約20%、60代では約半数の男性が、“治療が必要な”低テストステロン値を示すと報告されています。
男性ホルモンの低下は加齢とともに多くの男性が経験しますが、症状の現れ方には個人差があります。
また、最近では、30代後半からホルモン低下がみられるケースもあります。先ほどもお話ししたように、ストレスや生活リズムがホルモンの低下の原因になることもあり、仕事や家庭のストレス、睡眠不足などに直面しやすい「働き盛り」の世代でも発症の可能性があります。
症状としてはどのようなものがありますか。
LOH症候群の症状は多岐にわたり、大きく分けると身体的症状と精神的症状の両面に現れます(図表1)。
身体的症状としては、発汗、ほてり、睡眠障害、記憶力・集中力の低下、筋肉量や筋力の低下、体脂肪の増加、骨密度の低下などがあります。
また、精神的症状としては、意欲の低下、気分の落ち込み、イライラ、集中困難、不眠などが主なものです。
いずれもホルモン低下による直接的な変化に加え、体型や体調の変化に伴う二次的・三次的な精神的影響も関係しています。

抑うつや老化などの症状に似ているものもありますが、LOH症候群を自覚するポイントは何でしょうか。
確かに、うつ病や老化と似た症状も多いです。
ただし、LOH症候群では「朝の勃起が減った」「性欲が落ちた」といった性機能の変化を伴うことが特徴です。また、仕事への意欲の低下や疲れやすさが続く場合も要注意です。
こうした症状が3か月以上続くときは、単なる疲労やストレスではなく、男性ホルモンの低下が関係している可能性があります。自己判断せず、泌尿器科など専門科での相談をおすすめします。
LOH症候群の治療
肥満はテストステロンの低下と密接な関係があり、日常生活で最も気を付けるべきポイントです。
治療法はあるのですか。
まずは血液検査でホルモン値を測定し、診断を行います。
治療としては、テストステロンの補充、生活習慣の改善、心理的サポートという3つがあります(図表2)。診断結果に基づいて、テストステロンの補充の適応があればテストステロン補充を行います。
LOH症候群の症状の原因がうつ病に起因することも多くあるので、その場合は心療内科や精神科へ紹介させていただきます。
| テストステロン補充療法(TRT) | 筋肉注射や外用剤により、不足した男性ホルモンを補う。 |
|---|---|
| 生活習慣の改善 | 睡眠、運動、栄養、ストレス管理など、生活習慣を整えることで自然なホルモン分泌を助ける。 |
| 心理的サポート | うつ傾向や不安を伴う場合には、カウンセリングや精神科的治療を併用。 |
治療により症状の軽減が期待できるものですか。
個人差はありますが、テストステロンの補充による治療を開始して1〜3か月で「気分が明るくなった」「仕事への集中力が戻った」といった気分や活力の改善、性機能や集中力の回復などを感じる方が多いです。
ただし、症状の背景にうつ病などの精神的要因がある場合には、ホルモン補充だけでは十分な改善が得られないこともあります。その際には、精神科や心療内科との併診・治療を併用し、心のケアも含めた総合的な対応が重要です。
また、治療の効果を維持するためには、定期的なホルモン測定と生活習慣の見直しも欠かせません。
生活習慣の見直しが治療の一つであるということは、身近なところでできることもありそうですね。
日常生活の改善は治療と同じくらい大切です。
以下のポイント(図表3)が、症状の軽減や予防に役立ちますので、ぜひ参考にしてください。特に、肥満はテストステロンの低下と密接な関係があり、日常生活で最も気を付けるべきポイントです。
こうした習慣がホルモン分泌を整え、心身の安定につながります。
- しっかり眠る(7時間前後の質の良い睡眠)
- 適度に体を動かす(ウォーキングや筋トレ)
- バランスのとれた食事(特にたんぱく質・亜鉛・ビタミンD)
- 飲酒や喫煙を控える
- ストレスを溜め込まないようにする
図表3:テストステロンの低下予防が期待できる生活習慣
三重大学病院におけるLOH症候群の診療
全身的な健康状態や心理的背景も含めて総合的に評価することを重視。学際的なチーム医療体制と大学病院ならではの最新知見を生かした治療を実施。
三重大学病院では、どのように男性更年期障害の診療を行っていますか。
当院の泌尿器科では、ホルモン値の測定だけでなく、全身的な健康状態や心理的背景も含めて総合的に評価することを重視しています(図表4)。
これにより、「疲れやすい」「やる気が出ない」といったあいまいな症状でも、原因を丁寧に探り、最適な治療を提案できるようにしています。
また、内分泌代謝内科や精神科と連携し、必要に応じて多角的にサポートを行います。こうした学際的なチーム医療体制と、大学病院ならではの最新知見を生かした治療を実施できるのが強みです。

最後に患者さんへのメッセージをお願いします。
「年齢のせい」とあきらめずに、気になる症状があれば気軽に相談してください。男性ホルモンの低下は自然な変化ですが、適切な治療で心身のバランスを取り戻すことができます。
仕事も趣味も人生も、より充実した毎日を送るために、ぜひ専門医の診察を受けてください。


