心臓血管外科 山内新教授
- 2026-6-4
- VOICE
心臓や血管といった、まさに生命維持に欠かせない臓器の診療を行う心臓血管外科。手術においても非常に高い技術を求められる領域の一つですが、実は専門医の数は減少傾向にあります。
そんな中、大学病院である当院の心臓血管外科も高度な診療だけでなく、将来に向けた人材育成という大きなミッションを担っています。その新しいリーダーとして、今年3月1日付で着任したのが山内孝教授。さまざまな環境変化に合った「人を育て、チームを育てる」組織づくりが大切なテーマになりそうです。
それ行け!三重大学病院。それ行け!山内孝 心臓血管外科新教授。三重県の心臓血管外科医療の未来を守り、「ここで治療を受けて本当に良かった」と思ってもらえる医療を届け続けるために。
| 心臓血管外科 | |
|---|---|
| 科長・教授 | 山内 孝 |

心臓血管外科の科長、そして教授への就任に際しての抱負をお聞かせください。
心臓血管外科は、近年、全国的に担い手の減少が続いており、とりわけ人口減少が進む地域では、医療体制の維持そのものが大きな課題となっています。
三重県においても、決して他人事ではありません。三重県の心臓血管外科医療を持続的に支えていくために、三重大学が中心となっていくことは非常に重要で、その体制づくりに力を尽くしたいと考えています。
そして、地域の皆さんに安心していただける医療をこれからも着実に守り、発展させていくことが私の使命だと思っています。
その抱負の下、特に取り組んでいきたいことはありますか。
まず、最も大切なのは、人を育て、チームを育てることだと考えています。
医師も年齢や経験とともに目標や課題が変わってきます。若手には基礎をしっかり身につけられる環境が、中堅には思いっきり力を発揮できる場が必要です。また、ベテランには経験を活かして組織を支える役割も出てきます。
それぞれが自分らしく力を発揮できる仕組みを整え、互いに学び合い、支え合える医局をつくることにしっかり取り組んでいきます。
人材育成も担う大学病院としては、とても重要な取り組みですね。
その通りです。地域医療の偏在が課題となって久しく、さまざまな制度や仕組みが整えられてきましたが、それだけで十分に解決できるものではありません。
私は、地域医療を支えるうえで、大学医局が果たしてきた役割は非常に大きいと感じていますし、今後もその重要性は変わらないと思っています。
一方で、現在の大学医局は、臨床以外の業務負担や環境の変化もあり、若い医師にとって必ずしも魅力だと感じない部分もあります。
その中で「この医局に所属することが、自分の将来の可能性を広げてくれる」と感じてもらえる組織づくりが必要ですし、そのために力を注いでいきたいです。
「人を育て、チームを育てる」という点では、学生や若手の教育という面でも何か取り組みを考えていますか。
まず教育において大切なのは、知識を教えることだけではなく、学生や若手医師の心に残る経験を届けることだと考えています。
私たちが学生だった頃と比べ、今の医学教育を取り巻く環境は大きく変化しています。知識を得る手段は格段に増え、学生の価値観や医師という職業への向き合い方も多様化しています。
そうした時代に、従来の価値観のまま教育を行っても、十分には伝わらないでしょう。
だからこそ、「この経験があったから今の自分がある」と思ってもらえるような、印象に残る学びの場をつくりたいと思っています。実習や日々の関わりを通じて、医療のやりがいや責任、そしてチームで働くことの面白さを感じてもらえるよう、工夫を重ねていきたいです。
研究についてはいかがですか。
実は、若手外科医の数が減少する中で、研究に挑戦する人も少なくなっているのが現状です。しかし、研究は日々の臨床をより良くし、医療の未来を切り拓く大切な営みです。
私自身もこれまで、臨床の現場で感じた疑問や課題を出発点として研究に取り組んできました。
若手医師にも、日々の診療の中から問いを見つけ、自分なりのテーマを持って挑戦してほしいと思っています。臨床だけでなく、研究の面でも達成感を得られる医師を育てていきたいです。
ご自身としては、どういった研究を進めてこられたのですか。
これまで主に市中病院で臨床に携わる中で、日々の診療で感じる疑問や、治療に難渋する症例をテーマに研究を続けてきました。
具体的には、重症患者さんをいかに安全に救命するか、より良い治療成績につながる新たな指標を見つけられないか、といった内容です。
研究の根底にずっとあるのが、実際の臨床に役立てたいという気持ちですが、これからもそこを大切にしながら、患者さんに還元できる研究に取り組んでいきたいと考えています。
ところで、三重県には今回の教授就任に伴って移住したとお聞きしています。三重県や三重大学病院の印象はいかがですか。
そうなんです。生まれは和歌山県橋本市で、もともと自然のある環境が好きなので、津市はほどよい落ち着きがあり、とても暮らしやすいと感じています。少し車を走らせれば田園風景も広がっていて、どこか故郷を思い出して心が落ち着きます。
また、三重大学病院は決して巨大な組織ではありませんが、その分、診療科や職種の垣根を越えて人と人との距離が近く、とても温かい雰囲気があります。皆さんが協力的で、非常に働きやすい環境だと感じています。
それでは最後に患者さんへのメッセージをお願いします。
三重県の患者さんに、常に安心して治療を受けていただける医療を届けていきたいと思っています。
最新の医療を取り入れることはもちろん大切ですが、それ以上に、「ここで治療を受けて本当に良かった」と心から感じていただけることを診療科としても大事にしていきます。患者さんとご家族に寄り添いながら、信頼される心臓血管外科医療をチーム一丸となって提供してまいります。

心臓血管外科 科長・教授
山内 孝
大阪大学医学部を卒業し、学生時代の臨床実習で偶然配属された心臓血管外科との出会いがこの道に進むきっかけになりました。
医師として心がけているのは、患者さんのために最善を尽くすことはもちろん、一緒に医療を支える多職種のスタッフにも「この仕事にやりがいを感じる」と思ってもらえるようなチームづくりです。
休日は、愛犬の散歩をしたり、録りためたテレビ番組を見たり、ゆっくり過ごすのが好きで、何もせずに頭をリセットする時間を大切にしています。
そんなごく普通の50代の一人として、これからも自然体で、誠実に仕事に向き合っていきたいと思っています。その先については、実家が和歌山県の農家ですので、「心臓外科医を引退したら農業をしようかな」と考えたりしています。
医療スタッフや事務職員、外部委託のスタッフを含め、三重大学病院の日々の運営に携わるのは、総勢約2500人。表から、裏から様々な形で関わるその一人ひとりの力や想いが、平常通りの診療を支えています。
安全な診療、優れた診療、質の高い診療、いずれも技術や設備だけでは成し遂げられません。
VOICEのコーナーでは、いろいろなスタッフの声を通して、三重大学病院の診療に欠かせない「人」としての側面をお伝えします。






