それ行け!三重大病院(診療科・部門紹介)

臨床工学部

手術支援ロボット、カテーテル、内視鏡、人工心肺装置、人工呼吸器、透析装置など、当院で使われている医療機器の種類は200に迫ります。これら医療機器の保守管理や機器の操作を担うのは、臨床工学技士と呼ばれるスペシャリストです。

求められるのは、機器に関する工学的・技術的な知識だけでなく、病気に関わる医学的な知識も兼ね備えていること。臨床工学部の山田技士長が、“いのちを支えるエンジニア”とも言われる臨床工学技士についてご紹介します。

それ行け、三重大病院。それ行け、臨床工学部。医療機器を通じ、安心・安全な医療を患者さんに届けるために。

臨床工学部
技士長 山田昌子

生命維持管理装置の操作や管理を担う臨床工学士

三重大学病院の臨床工学部は、現在30名の臨床工学技士(Clinical Engineer)で構成されており、高度救命救急・総合集中治療センターや手術室、アンギオ室、透析室、内視鏡室など医療機器を多く使用するところで働いています。

臨床工学技士は、医学的かつ工学的な知識を持つ医療機器の専門職種です。医師の指示のもと、生命維持管理装置(人の呼吸、循環あるいは代謝の機能の一部を代替、または補助するもの)の操作および保守点検を行うことが業務です。

また、院内横断的な「呼吸サポートチーム」や「術後疼痛管理チーム」といったチーム医療に参加し、生命維持をサポートする医療機器のスペシャリストとしても業務を行っています。

前列左から)松月正樹主任、行光昌宏主任、山田昌子技士長、冨田雅之、谷誠二主任
中列左から)小島功大、秋山朱璃、阪京香、木屋奈有里、寺家千晶
後列左から)伊藤巧真、河内雄暉、中條滉大、津曲佑馬、後藤健宏
当院では、この他15名を加えた計30名の臨床工学技士がそれぞれの専門性を深めながら、医療機器の安全運用のために活躍している。

194種類5322台の安全

当院の臨床工学技士が関わる医療機器は、心臓の働きを補助する装置(人工心肺装置やECMO装置)や肺の働きを補助する人工呼吸器をはじめ、透析患者さんの治療を行う透析装置などの生命維持管理装置、手術の際に使用する医療機器、患者さんの点滴などに使用される輸液ポンプやシリンジポンプなど計194種類、5,322台です。

これら一つひとつの医療機器が安心して使用できる状態であるよう点検・管理を行い、患者さんに医療機器を使用する際には、操作のサポートやアラーム対応を行うなど、安全に治療が進むよう支援しています。患者さんが装着されたペースメーカーなどの植え込みデバイスの管理も私たちが担当しています。

また、これらの医療機器を購入から廃棄まで一括管理し、計画に基づいた点検の実施や故障時の対応、修理状況などを把握し、保守管理をするのも重要な業務です。医療機器に関連した不具合が生じた場合には、原因の追究や検証、再発防止策の策定、職員への周知などを行うなど、医療機器が常に安全に使用されるよう努めています。

さまざまな領域におけるさらなる専門性

このように私たちが対象とする機器や患者さんはとても幅広いため、それぞれの領域の専門性を持つスペシャリストの育成や知識向上に継続的に取り組んでいます。

当院には、呼吸療法認定士(4名)や体外循環技術認定士(4名)、植込み型心臓デバイス認定士(4名)、心血管インターベーション技士(3名)、透析技術認定士(8名)、消化器内視鏡技士(2名)など、認定資格を持つ臨床工学技士が数多く在籍しています。

*上記の数字は2025年3月末現在

高度化する医療への対応

医療機器は技術の進歩に伴い年々高度化し、AIの活用やデジタル技術が導入された機器が増えてきています。その中で、臨床工学技士の業務は、2024年度よりさらに拡大し、社会的使命も広がっています。

例えば、医療機器に紐づく情報の管理や運用に必要な環境整備も新たな役割となりました。医療機器を扱う専門職種として、新しい技術を身につけるために、これまで以上のスピードで知識をアップデートしていく必要もあります。

患者さんが安全で信頼できる医療を受けられことを何よりも優先に、今後も常に向上心を忘れず、知識と技術の維持や向上に向けて研鑽を続け、医療の環境や技術の発展に挑戦する臨床工学技士でありたいと思います。

患者さんへ:いのちを支えるエンジニアとして

私たち臨床工学技士は「いのちを支えるエンジニア」として、医療機器を通じ、安心・安全な医療を患者さんに届けることがモットーです。

このモットーを大切にしながら、日々進歩する医療機器を用いて、患者さんの治療をサポートする重要な役割を担い、院内での生命維持管理装置の操作や管理、患者さんへの治療のサポートなどにも24時間交代制であたっています。

患者さんとの直接の触れ合いは少ない職種ですが、私たちが担う役割を十分発揮し、安心安全な医療を提供できるよう今後も支援していきたいと思います。

臨床工学部
技士長 山田昌子

私は学生時代を県外で過ごし、就職を機に三重県に戻ってきました。忙しい仕事とプライベートの切り替えは、愛猫との触れ合いです。ツンデレな性格に翻弄される毎日ですが、癒しを与えてもらっています。
私が仕事を始めた頃は、臨床工学技士という職種を知らない人が多く、医療機器のトラブル対応を通じて、医師や看護師の皆さんに名前や顔を覚えてもらうことが第一でした。その頃、医療機器の日付や時刻が2000年になった瞬間に動作しないかもしれない(医療機器の『コンピュータ西暦2000年問題』)という問題が発生し、臨床工学技士が医療機器の点検や管理を担うこととなり活躍する場が広がりました。
これからも医療機器の安全管理を担う立場として、臨床工学部スタッフ一同、三重大学病院に貢献し、患者さんの診療を支えていきたいと思います。

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