セカンドオピニオンのためのヒント
- 2024-4-4
- がん診療 CANCER MEWS
- #セカンドオピニオン, #がん
─ 治療方針に納得がいかない、迷いがあるときの第二の意見 ─
主治医とは違う、別の医師の意見、つまり「第二の意見」のことを「セカンドオピニオン」と言います。患者さんは、診断や治療方針などについて、別の見解を参考にしたいと思ったとき、セカンドオピニオンを求める権利を持っています。
特にがんの治療においては、誰もがいろいろな選択に悩みます。納得して治療にのぞむために、セカンドオピニオンが役立つことがあるかもしれません。しかし日本では、まだまだその利用に遠慮を感じる方も多いように見えます。
そこで今回は、セカンドオピニオンについて、がん支援センターの水野聡朗センター長に聞きました。
がん支援センター センター長
腫瘍内科 科長 水野聡朗
より深い理解と納得のための第二の意見
セカンドオピニオンとは何か、改めて教えてください。
診断や治療選択などについて、現在診療を受けている担当医の意見を「ファーストオピニオン」と言います。これとは別に、違う医療機関の医師に求める第二の意見、またはその意見を聞く行為を「セカンドオピニオン」といいます。
担当医以外の医師によるアドバイスを求めることで、自分の病状をより深く理解し、これから受ける医療を納得して開始できるようにするためのものです。
また、セカンドオピニオンは、がんに限らず、あらゆる疾患で利用することができます。
どういったときに、セカンドオピニオンを利用したらいいのでしょうか。
一般的には、患者さんが「担当医の説明に疑問が残る」、「本当にこの治療でよいのか?」というように、治療について納得がいかないときに利用するのがよいとされています。
このような状況以外にも、「複数ある検査・治療の選択肢の中から、どれを選択したらいいか判断に迷う」といったときなどにも検討してよいと思います。
疾患によっては、外科手術、内科的治療、内視鏡的治療など全く異なる治療法から、最終的には患者さん自身が選択しなければならない場合があります。このようなときには、“それぞれの治療について各専門家に意見を求め、理解を深める”という目的で、医師から患者さんにセカンドオピニオンをご提案することもあります。
セカンドオピニオンは患者さんの大切な権利
患者さんが自ら「セカンドオピニオンを聞きたい」と思ったとき、主治医に遠慮を感じてしまうこともあるように思います。主治医に希望をきっちり伝えるべきでしょうか。
セカンドオピニオンを希望する場合には、きちんと担当医にその旨を告げて、紹介状と診療情報を準備してもらうことが大事です。病気に関する正確な情報がないと、セカンドオピニオンで良い結果が得られないことがあります。
言い出しにくいという理由で、「担当医には言わずに受診したい」と希望される患者さんも時々いらっしゃいますが、内緒にすることは、かえって担当医との信頼関係を損なってしまうことが多いです。
セカンドオピニオンの希望について、主治医と上手にコミュニケーションするためのコツはありますか。
当院もそうですが、多くの医療機関の基本理念の中に、患者さんの選択の自由の権利として、“他の医師の意見(セカンドオピニオン)を求める権利を有する”ことを掲げています。セカンドオピニオンは患者さんの大切な権利ですので、遠慮をする必要は全くありません。
とは言え、実際に「言い出しくい」との声は患者さんから聞かれます。担当医との信頼関係を壊すことなく希望を伝えるには、例えば、「この病院で引き続き治療を受けたいと考えていますが」と一言添えたり、「セカンドオピニオンの結果を報告します」などの会話をすると、スムーズにいくことが多いように思います。
セカンドオピニオンを聞くときの心構えとしてはどうでしょうか。
近年、医療の進歩により、様々な疾患で治療の選択肢が増えています。そんな中で、自分の病状を理解しないまま、セカンドオピニオンを受けると、どの治療を選択すればよいのかわからなくなり、かえって混乱することがあります。それを避けるためにも、大切なのは、主治医から説明された自分の病状についてちゃんと理解した上で、セカンドオピニオンを受けるということです。
また、セカンドオピニオンの後には、先にお話ししたように、現在の担当医との信頼継続ためにも、受診結果をしっかり報告し、相談することがとても大切だと思います。
それが、自分自身で納得できる選択肢のために必要なことなんですね。
最近では、各領域や疾患に関わる学会が策定したガイドラインが普及しています。そこに標準的な検査・治療について示されているので、病院や医師によって意見が大きく異なることは多くはありません。よって、セカンドオピニオンを受けても、現在の担当医とおおむね同じ意見であることが多いと思います。
しかし、例え同じ意見であったとしても、別の専門家から改めて聞くことで、検査の必要性、病状、各治療のメリット・デメリットなどについてより理解が深まるので、患者さんは納得して治療にのぞむことできるようになると思います。
セカンドオピニオンを受けた病院に転院するということもあり得るのですか。
セカンドオピニオンは、現在の担当医のもとで治療を継続することを前提に利用するものなので、基本的にはセカンドオピニオンを受けた病院に転院することはありません。
例外的に、限られた施設でしか実施されていない検査・治療法などがセカンドオピニオンによって選択肢になった場合には、セカンドオピニオン先の医療機関、あるいはその他の医療機関に転院することはあり得ます。
費用については?
日本では、セカンドオピニオン外来は、基本的に公的医療保険が適用されない自費診療となっています。そのため、費用は病院によって異なりますので、事前に確認した方がよいでしょう。
これまでのセカンドオピニオン外来での経験を基に、もし他にアドバイスがあれば聞かせてください。
私の専門であるがん治療領域では、病状によっては治療開始を急ぐ必要があり、セカンドオピニオンのために十分に時間を確保することが難しいケースがしばしばあります。
そのような場合には、限られた時間を最大限有効に活用するため、セカンドオピニオンに際しては、現在の担当医の意見をしっかり理解した上で、聞きたい点をあらかじめメモにまとめておく、聞き漏らしのリスクを減らすため必ず家族か親族と一緒に受診する、などの準備していただくことをおすすめしています。
三重大学病院のセカンドオピニオン外来
三重大学病院にもセカンドオピニオン外来があります。どのように対応しているのでしょうか。
当院では、現時点で16の診療科がセカンドオピニオン外来に対応しています。それぞれの疾患や病状、相談内容に合った診療科の専門医が担当するようになっています。ご利用いただけるのは、これも医療機関により多少の違いがありますが、当院の場合は、患者さん本人、あるいは患者さんの同意を得たご家族かご親族の方のみとなります。患者さんとご家族の方が同席していただくことも可能です。
また、当院でのセカンドオピニオンをご希望される場合は、現在診療を受けている医療機関からのお申込み手続きをしていただくことが必要です。
どんな治療でも、やはり自分自身が納得し、前向きに受けることが望ましいと思います。当院には各疾患に専門医がいますので、セカンドオピニオンを聞いてみたいと思われたときには、現在の主治医に相談してみてください。
三重大学病院のセカンドオピニオン外来については、下記のページをご参照ください。
がん支援センター センター長
腫瘍内科 科長 水野聡朗
名古屋市出身。大学卒業後は消化器内科医としてキャリアを開始しましたが、卒後5年目に研修に行った国立がん研究センター中央病院で、腫瘍内科学を学ぶ機会に恵まれ、それを機に腫瘍内科医に転向しました。日頃の診療では、病気の性質や患者さんの希望に沿った「個別化治療」の実践を心がけています。