尿路結石
腎臓から、尿管、膀胱、尿道まで、尿が通る道を尿路と呼びます。尿の中で過剰になったミネラルが結晶化したものが結石で、小さいものであれば、知らず知らずのうちに尿と一緒に排泄されますが、大きくなって尿路のどこかに留まってしまうと、痛みなど様々な症状を引き起こします。我慢していると重度の合併症を起こすこともあるので、自覚症状が出たらすぐに診察を受けることが重要です。
今回は、尿路結石の症状や治療法、再発予防について解説します。
尿路結石とは
尿路結石とは、主に腎臓で形成された結石が腎盂(じんう)や尿管などに移動し、痛みや血尿などの症状を引き起こす疾患です。結石の存在している部位によって、「上部尿路結石」(腎盂、尿管)と「下部尿路結石」(膀胱、前立腺、尿道)に分けられます。
10年毎の全国調査において、上部尿路結石症の罹患率は、2005 年まで増加傾向でしたが、それ以降は大きな変化なく推移しています。
一方で、下部尿路結石の年間罹患率は、1965年から2015年の50年間で2倍以上増加しました。特に、2005年からの10年間は、女性の罹患率にあまり変化はないものの、男性では増加傾向を認めています。
この過去の急激な増加の背景には、生活環境の変化や食生活の欧米化などがあると考えられます。しかし、近年では、メタボリックシンドロームの概念の浸透に伴い、健康的な食生活の維持に対する意識の高まりもあって、年々増加するような状況には至っていないと見られます。
尿路結石を引き起こす原因
尿路結石は、複数の要因が組み合わさって発生します。
主な原因としてあげられるのは、体内でのミネラルの過剰な濃縮です。水分摂取が不足すると尿が濃縮され、カルシウム、尿酸、シュウ酸などが結晶化しやすくなります。
また、食生活が大きく関与しており、高タンパク・高塩分・高シュウ酸の食事は尿路結石のリスクを高めます。
さらに、遺伝的要素や特定の健康状態(例えば、尿酸値が高くなる高尿酸血症、特定の腎疾患、糖尿病など)も結石の形成に影響することがあります。
自覚症状 ― こんな症状が見られたら注意!
尿路結石の主な症状には、「急激な痛み」、「血尿」、「頻尿や尿意切迫感」、「吐き気や嘔吐」の4つがあります。
急激な痛み | ・結石が腎臓から尿管に移動するとき生じる。 ・通常、腰から側腹部、または下腹部にかけて発生するが、しばしば背中や陰嚢の方まで広がることもある。 ・痛みの特徴としては、波のように激しくなったり和らいだりする。 |
血尿 | ・結石が尿路の壁を傷つけた結果として起こる。 ・尿がピンク、赤、または茶色に見えると血尿が疑われる。 |
頻尿や尿意切迫感 | ・結石が膀胱内に存在する場合に起こりやすい。 |
吐き気や嘔吐 | ・結石による痛みによって、間接的に引き起こされる。 |
また、上記以外にも、結石によって尿の流れが阻害され、さらに尿路感染症を合併してしまうと敗血症を発症することがあります。敗血症は、心臓や肺を含む臓器の機能不全につながりかねないので注意が必要です。結石の症状に加え、発熱が見られた場合は、早めに医療機関を受診することが重要です。
治療
尿路結石の治療法は、結石の大きさや位置、および患者さんの症状経過によって異なります。
小さい結石(5mm以下)の場合、多くは自然に排出されるため、積極的な治療を必要とせず、充分な水分を摂取して排石を促すことが一般的です。
痛みが強い場合には、痛み止めの薬が処方されます。
大きな結石や、尿路を塞いでしまうような結石の場合は、体外から衝撃波をあてて結石を細かく砕く体外衝撃波石砕術(ESWL)や、内視鏡を用いて結石を直接取り除く手術が選ばれることもあります(図1)。
さらに、結石の成分に応じた食事療法や薬物療法を取り入れ、再発防止策も検討されます。
治療方法については、医師とよく相談し、個々の状況に最適な方法を選ぶことが大切です。
小 ← 結石の大きさ → 大 | 保存的治療 | ・尿と一緒に排石を促す治療法 ・十分な飲水(1日2L程)と適度な運動、必要に応じて内服薬を服用 |
体外衝撃波破砕術 | ・体外から衝撃波を当て、結石を細かく砕く治療法 ・破砕された結石は、尿と一緒に排石 ・治療1回当たり、日帰り〜1泊2日で可能 | |
経尿道的尿路結石破砕術 (TUL) | ・腰椎麻酔もしくは全身麻酔下で内視鏡を挿入し、レーザーなどで結石を破砕 ・術中に結石を取り出すことも可能 ・入院期間は3日〜1週間程度 | |
経皮的腎砕石術 (PNL) | ・大きな腎結石やTULでは困難な結石に適応 ・背中から腎臓まで筒を挿入し、筒の中に内視鏡を入れ、結石を破砕 ・入院期間は1〜2週間程度 |
結石の再発予防
尿路結石の再発予防には、日常生活での習慣が非常に重要です。
まず基本となるのは、十分な水分摂取です。1日に2リットル以上の水を飲むことで、尿が薄まり結石ができにくくなります。
また、食生活においては、塩分と動物性蛋白質の摂取を控えめにすることが重要です。カルシウムは適量(1日600mg程度、牛乳3杯程度)を摂取することが勧められています。シュウ酸の多い食品(例:ほうれん草、チョコレート、たけのこなど)の過剰な摂取も避けましょう。
さらに、定期的に尿検査を行い、尿の成分をチェックすることで、結石の早期発見や成分に基づいた予防策を立てることが可能です。
これらの生活習慣の改善が、尿路結石の再発を防ぐための鍵となります。
腎泌尿器外科
助教 西川 武友
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尿管結石の急性期には強い痛みが生じますが、その後は無症状で経過することがあります。そのような尿管結石を長期間放置すると、腎機能の低下を引き起こしてしまうこともあります。疑わしい症状を認めた場合には、一時的な症状であっても、近くの泌尿器科へ受診することをおすすめします。
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