いろいろな病気と治療

帯状疱疹(たいじょうほうしん)

皮膚科
副科長・病院教授 波部幸司

帯状疱疹の原因は何ですか。

帯状疱疹を引き起こすのは、水痘・帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus、以下「VZV」)です。

VZVは、ヒトに感染する9つのヘルペスウイルスの一つで、皮膚や粘膜、神経に親和性が高い性質があります。過去の病理解剖などからも、皮疹部位の知覚神経や神経節の損傷が証明されています。

VZVは空気感染し、初感染ではほとんどの場合に水痘を発症します。現在は、水痘ワクチンが幼児期の定期接種とされていますが、その普及以前の調査では9歳以下の罹患が多い、冬に流行しやすいなどの傾向がありました。

そして、VZVは一度感染すると、再活性化できる状態で宿主に潜伏感染するという特徴があります。

子ども時代に感染して、潜伏していたウイルスが再び大人になってから活性化して、帯状疱疹を引き起こすということですか。

そうです。帯状疱疹は、脊髄の神経節に潜伏感染していたVZVが、水痘罹患後の数年から数十年後に加齢などによる細胞性免疫能の低下や疲労、ストレスなどの誘因に伴い再活性化することで発症します(図1)。

図1 VZV(水痘・帯状疱疹ウイルス)の潜伏と再活性化

一度でも水痘になったことがある人は帯状疱疹のリスクを抱えているわけですね。

帯状疱疹は、水痘の罹患歴があれば発症し得るので、現在の成人の多くでは発症の可能性があります。80歳までに3人に1人の確率で発症するとも言われます。

特に、高齢者、家族が帯状疱疹になったことのある方、女性、心理的ストレスのある方の他、HIV/AIDS、がん、糖尿病、関節リウマチ、心血管疾患、腎疾患、SLE、炎症性腸疾患、身体的外傷などの疾患がある方に発症しやすいといった報告もあります。

症状としては、どういったものがあるのでしょうか。

例外もありますが、典型的な症状の特徴としては、1)急性の病変、2)片側の病変、3)痛みを伴う、4)紅斑(赤み)や丘疹(赤いぷつぷつ)、5)水疱(水ぶくれ)、6)発疹(体の一部)などがあります。

ほとんどの場合、発疹が出現しますが、その前に疼痛などが一定期間続くことがあり、この疼痛のある期間に皮膚科以外の診療科を受診される方もみえます。

発疹は出現後1ヶ月程度で治癒することが多いです。

図2 帯状疱疹の主な症状

帯状疱疹はウイルスによるものですが、感染の可能性はありますか。

帯状疱疹の感染性は、水痘に比較すると低いものの、水ぶくれの中には、水痘・帯状疱疹ウイルスが存在するので、このウイルスに対して免疫のない人にうつると、水痘を発症する可能性があります。

主な感染経路は接触感染ですが、播種性帯状疱疹など、場合によっては、空気感染にも注意が必要な場合もあります。

よって、帯状疱疹にかかったら発疹が乾燥・痂皮化するまでは、特に水痘・帯状疱疹ウイルスに対して免疫の無い人、妊娠中の女性、免疫不全の方などとの接触は避けるようにしてください。

皮膚症状以外にも特徴的なものはあるのですか。

先ほどお話したように、主なものは皮膚症状ですが、それ以外にもさまざまな合併症の問題も伴います。

その代表的なものが「帯状疱疹後神経痛」というものです。

帯状疱疹後神経痛は、VZV感染で引き起こされた、神経組織の変性あるいは壊死による神経障害性疼痛です。

皮疹消失後3か月以上にわたって疼痛が持続する場合を指しますが、痛みは数か月から数年にわたります。帯状疱疹後神経痛患者の30%以上が1年以上持続する痛みを経験するとも言われています。

帯状疱疹後神経痛は、かなりの確率で発症するのでしょうか。

年齢、定義などで異なりますが、帯状疱疹後神経痛は帯状疱疹患者の10%から50%で生じるともされています。

特に、発症のリスクが高いケースとして、高齢者、皮疹の重症度の高い患者さん、夜眠れないほどの痛みのある患者さん、電撃痛(電気がはしる様な痛み)のある患者さん、喫煙やアルコール摂取などの生活歴のある患者さんをあげることができます。

また、帯状疱疹後神経痛は、帯状疱疹で最も頻度の高い合併症で、かなりの痛みを伴うことが多いため、患者さんのQOL低下を引き起こします。

帯状疱疹後神経痛を含む帯状疱疹の治療はどのように行われますか。

まず、帯状疱疹を治療する目的には、発疹の拡大を阻止する、合併症を阻止する、ウイルス感染による知覚神経障害の軽減をはかる、ウイルス拡散の防止することなどが含まれます。

そして、治療で大切なことは、水痘と同様に発症後早期に抗ウイルス薬の投与を開始することです。抗ウイルス薬により、発疹も早めの改善が見込めます。

抗ウイルス薬である内服薬も複数の種類が現在はあります。部位を含めた症状や年齢、腎臓の機能などを総合的に判断の上、選択し、用量を決めます。

多くの場合では、内服薬処方による外来通院での治療となりますが、重症例や著しく免疫力が落ちている患者さんなどでは、点滴治療を中心とした入院治療となることもあります。

予防はできますか。

冒頭で発症しやすい方の傾向を挙げましたが、まずは生活習慣や体調を整え、ストレスを抱えすぎず、免疫力を落とさないようにすることです。

ワクチンによる予防としては、わが国でも2016年から水痘生ワクチンが帯状疱疹の発症予防に適応が拡大しました。また、2020年にサブユニットワクチンの販売が開始され、予防接種法に基づいて、2025年度から65歳の方などへの帯状疱疹ワクチンが定期接種の対象となっています。

サブユニットワクチンは、接種回数が2回となり、自己負担額も生ワクチンより高くなりますが、接種後10年でも予防効果が7割であるとのデータも出ています。

ここ津市でもこのワクチンの定期接種が行われていますし、多くの自治体でも実施していますので、一度確認してみてください。

皮膚科
副科長・病院教授 波部幸司

皮膚症状には、あらゆるメッセージがこめられています。このメッセージを、いかに正しく、深く理解するかが、皮膚科医の使命の1つだと考えています。
最近、昔はわからなかった野菜の美味しさがわかるようになってきました。

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